651.食品180万年史(2014.1.06掲載)
毎年恒例大晦日の大親友温泉旅館忘年会、30回記念となる今年も無事完遂し、めでたく元日の朝を迎えた。 毎度のことであるが、夕餉の宴会を経て乾き物を酒肴に朝までだらだらと飲み続ける。そこで今回は向学のため、食品加工180万年の歴史を肴に酩酊を楽しむことにした。 まず、1次会の箱膳には温泉宿的に違和感のあるビーフシチューとロールパン(意外とおいしい)。シチューは別として、肉の加熱は180万年前に始まった最古の食品加工といわれている。加熱調理で消化がよくなり、余剰エネルギーが脳に回って人類は進化したのだ。 パンの加工は農耕の始まりより古く3万年前。パンは持ち運びに便利で栄養価が高く腐りにくいが、栄養摂取という点では後退した。実は、新石器時代の狩猟民族は農耕民族より効率的で、6時間の狩猟採集で獲得するカロリーを農業で得るには10時間を要したらしい。 そしてビールは紀元前7000年。パン作りの副産物として偶然生まれたビールであるが、人々はこの魔法の液体に歓喜し、積極的に発酵に取り組み始めた。古代シュメール人は、収穫した穀物の40%をビール製造に振り向けていた可能性がある。 ワインは少し新しく紀元前5400年。起源はイランのザグロス山脈だが、海上交易に長けたフェニキア人が地中海諸国に広めた。 満腹の深夜でもチーズはおいしい。紀元前5000年、乳を反芻動物の胃袋で作った容器に入れて攪拌すると固まった。そして保存性が向上。乳糖分解酵素を持たない新石器人も、チーズなら大丈夫だ。 未明の宴席で意外と受けるのがチョコレートで、ガーナチョコと麦チョコがあれば完璧。紀元前1900年に中央アメリカで発生したカカオ豆飲料がスペインに渡り、チョコレートができた。 ここらで漬物が恋しくなってキムチ。700年頃にできた最初のキムチは白菜の塩漬けで辛くなかった。16世紀に秀吉軍が武器として持ち込んだ唐辛子のおかげで、現在のキムチが完成したのだ。 食品180万年史を経て、飽食の平成26年史が始まるのである。
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