694.NHKドラマに学ぶ(2014.11.10掲載)
最近、NHKドラマのレベルがもの凄く高くなったような気がする。大河ドラマはもとより、土曜ドラマや火曜日のドラマ10など、映画と見まがうばかりの仕上がりである。 この傾向は、映画監督の大友啓史さんがNHK時代に手がけた2007年の「ハゲタカ」あたりからではないか。その後、大友監督は2009年に「白洲次郎」、2010年に「龍馬伝」でテレビドラマに関する著名な賞を受賞している(ハゲタカも受賞)。 小生昭和のテレビっ子。当然ながらNHKドラマにどっぷりはまり、毎年私的に最優秀作品賞を決定してはDVDを購入するというささやかな道楽に興じている。 ちなみに私的MVPは、2011年「下流の宴」、2012年「とんび」、2013年「雲霧仁左衛門」である。 ではなぜNHKドラマはすごいのか。それは、CMがないことに起因する3つの要素があるからではないか。 その1.CMがないからストーリーに入り込める。暗めのリアルな照明、奥行きのあるフィルム。映画とテレビの違いが映像の美しさにあるとすれば、CMにじゃまされないNHKはとことん映像美を追求でき、視聴者はそのワールドに入り込める。 その2.CMがあると説明的になってしまう。民放ドラマはCMでチャンネルを変えられないよう、視聴者をサポートする説明的な部分が数多く存在する。これは野暮。あとからじわーっと理解できる部分があるのもまた一興なのだ。 その3.CMスポンサーに気を遣わなくて済む。つまり細部にこだわれる。かつて東芝が「サザエさん」に出した要求は、「季節感を出す、流行を追わない、暗い話題を用いない」だったらしい。国民的お茶の間アニメはそれでもいいが、夜のドラマに過剰な足かせは不要。 な、なんとこの3要素、食品開発の理想形ではないか。とことん美味しさにこだわり、パンフレットで説明しなくても浸透し、バイヤーのご機嫌を伺わなくても売れる商品。 あぁ、価格や手間で妥協して民放ドラマ的商品作りになっていたな。 テレビっ子としてはこの上ない教材に気づかされた、晩秋の夜なのであった。
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