695.5教科(2014.11.17掲載)
小学生を対象とする食育授業において、鰹節ほど優れた教材は他にないように思う。 それは、国語、算数、理科、社会、家庭科という5教科の要素をすべて備えているから。 国語…鰹という漢字の成り立ちは「堅+魚」。煮るとかたくなることから堅魚となった。万葉集の歌人に「石上堅魚」という朝廷の次官がいて、「いそのかみのかつお」と呼ばれていたことを考えると、当時から「堅魚=かつお」だったに違いない。 理科…鰹節にはカツオを煮て燻しただけの荒節と、それを発酵した枯節の2種類がある。枯節はかびの力を借りる発酵食品であり、発酵というサイエンスによって保存性を高めた日本人の知恵の塊である。完成は江戸元禄期。同時代にできた発酵食品にはみりんと酢がある。 社会…鰹節が商品として世に出るために、多くの働く人々がものづくりに関わっている。大海でカツオを漁獲する「漁師さん」、そのカツオを煮て燻して鰹節にする「鰹節屋さん」、そして、鰹節を削って袋に詰めてスーパーに並べる「削り節屋さん」。赤道直下で漁獲されたカツオが削り節としてスーパーに並ぶまで約半年。長い道のりである。 家庭科…教室でだし取り実習をすると、めちゃくちゃ盛り上がる。水に昆布を入れて火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出して削り節を入れる。弱火で5分ほど煮て、終了寸前に生徒たちがカンナで手削りした削り節を投入。そしてキッチンペーパーでこし取って完成。ほのぼのするだしの味と香りは、小学生にも十分伝わる和の原点なのだ。 このような鰹節と昆布の合わせだしには、「相乗効果」と呼ばれる味の増強作用がある。それぞれ単独のだしより合わせた方が味が濃くなり、1+1=8になるイメージ。これを業界では「だし算」と呼ぶ…つまり算数。 では、なぜかつお節と昆布を合わせると相乗効果が発現するのか。それは、栄養バランスを取るために、動物性のかつお節と植物性の昆布を合わせて食べるように仕向けた造物主のはからい。う〜ん、これは宗教だな。 やはり小学生には5教科で十分。 だし算という下げでお開きにするのが最適と考える次第であります。
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