716.大麦小麦(2015.4.20掲載)
萩原健一がなぜ「ショーケン」と呼ばれるようになったのかは、ファンなら誰でも知っているエピソードである。 1960年代、六本木をたむろする悪童に大ケンと中ケンがいた。ここに加わった新メンバーが萩原健一で、自然と小ケンになった。で、ショーケン。ダーティヒーローとしては申し分ない来歴ではないか。 ところで、いま世界で最も多く栽培されている穀物は小麦であるが、小麦というネーミングも大ケン小ケン同様、「大麦小麦」。 小麦は昔から主役だったわけではなく、古代エジプト、古代インド、先秦時代までの中国など、古代帝国の食文化はまず大麦で始まった。 大麦の方が西アジアの乾燥土壌に強く、収穫時期も小麦より1、2週間早いため気象の変化による被害を受けないうちに収穫ができた。大麦の方が安定生産でき、収穫量も多かったのだ。 大麦小麦は穂が大きい小さいということではない。中国では主要なものを「大」と言い、従属的なものを「小」と言った。大麦全盛期にサブ穀物だったから小麦。それが今日、米やトウモロコシを抑えて世界最大の穀物となった。 変わり目は食文化。 大麦が主役の時代の食べ方は、メソポタミアでもインドでも中国でもお粥。大麦は吸水率が良く、お粥や麦ごはんに向いている。小麦ごはんはパサパサでおいしくない。 ところが、時代が進んで人々がパンに目覚めた時、大麦と小麦の立場は逆転した。大麦のパンはひび割れて堅く、うまく膨らまない。小麦は柔らかくておいしい上に発酵に適しており、ふっくら膨らんで満腹感を創出する。 さらに、グルテンのおかげで麺にしてももっちり。切れ切れになってしまう大麦とは違い、麺文化でも小麦は主役になった。そして、ピザ、ガレット、チャパティ、チヂミ、お好み焼きという世界の「粉モノ文化」へと発展したのだ。 大麦小麦と大ケン中ケン小ケンという意外な縁。 ショーケン完全復活の日を待ちわびる1ファンのつぶやきである。
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