715.Tレグ(2015.4.13掲載)
4月5日放送のNHKスペシャルで、画期的なアレルギー治療法が紹介されていた。 治療法発見のヒントとなったのが、アレルギー患者が一人もいない「アーミッシュ」と呼ばれる集団の村。米国オハイオ州にあるこの集落では移民当時の古典的な暮らしを継続しており、幼少期に家畜に触れることでアレルギー症状を回避できているらしい。 鍵となるのが「Tレグ(制御性T細胞)」と呼ばれる物質で、花粉などの無害な異物を攻撃する免疫細胞の暴走を抑える。アーミッシュの人たちは、血液中のTレグが都会人より35%も多いのだ。 つまり、家畜と触れ合う暮らしでTレグが増え、アレルギーが発症しないわけだが、これは10年前に提唱されていた「衛生仮説」のバージョンアップ版かもしれない。 年上の兄弟がいる者、A型肝炎感染者、ツベルクリン反応陽性者はアレルギー性鼻炎の発症率が低い。つまり、大家族で不衛生な環境がいいという衛生仮説。これを物質レベルで検証したのがTレグ救世主説である。 この流れで、食品アレルギー予防のため離乳食からアレルゲンを排除する手法は間違っていたということになった。実際、幼児期に週3回ピーナッツを食べた群の方が、ピーナッツを避けた群より圧倒的にピーナッツアレルギーの発症率が低かった。食べればそれに対応するTレグができるのだ。 ああ、学説に振り回されたアレルギー事情。名誉挽回すべく、さらなる研究が着々と進んでいる。「スギ花粉症治療米」である。 2020年の発売を目指すスギ花粉症治療米は、花粉の無害なタンパク質をつくりだす遺伝子をイネに導入し、これを食べることで体内のTレグを増やすという仕組みだ。 昭和の大家族で幼少期を過ごしたおかげでアレルギーとは無縁の私だが、Tバック+ハイレグのようなTレグには興味がある。 3000万人といわれる花粉症患者には失礼かもしれないが、炊きたてのスギ花粉症治療米を頬張ってみたいと思う今日この頃である。
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