749.落語両国街歩き(2015.12.14掲載)
最近、BSを中心に江戸情緒を堪能する番組が増えたような気がする。時代劇が激減した反動か、はたまた安定経済のお手本にしたいからか。 テレビもいいが、街へ出ようではないか。 ここに、江戸情緒体感お手軽コースを提案する。 落語(鈴本演芸場2800円) 言うまでもなく江戸落語の聖地である上野鈴本の寄席。他に浅草、新宿、池袋にも寄席はあるが、上野が一番江戸っぽい。 もちろん、古典が得意な噺家さんを狙って木戸をくぐるわけだが、欲を言えば40分程度の大ネタを噛まずに演じてほしい。さすがの話芸にいざなわれて江戸時代にトリップしても、噛んだ瞬間現実に引き戻されてしまうから。 「おまえさんも呑んどくれ」「よそう、…また夢になるといけねェ(芝浜より)」 両国(国技館本場所の2階自由席2200円) 大相撲本場所の両国国技館は、完全なる江戸時代である。入ってすぐの所に枡席を仕切るお茶屋さんがあって、武家屋敷に仕える中間のような格好をしたスタッフが案内や給仕役を務める。 枡席御無用とつぶやきながらそこをスルーし、さらに中に入ると土俵を囲む満員御礼の客席。髷に浴衣の力士、呼び出し、行事、小僧さん…。まさにワールドである、江戸時代である。 「この相撲一番にて千秋楽にござります(37代木村庄之助)」 街歩き(とりあえず本郷界隈0円) 江戸情緒を探るポイントは、坂と水路と街道。 転がると炭団(昔使われていた燃料)のように真っ黒になってしまうほど坂が急だった、本郷4丁目の炭団坂(たどんざか)。かつて、文京区と台東区の境界線に流れていた藍染川と、その川を利用していた染物屋さんの「丁子屋」。 そして、「かねやす」という歯磨き粉を売る店があった本郷3丁目の交差点に立つと、道の高低差からそこが街と郊外の境になっていたことが想像できる。 「本郷もかねやすまでは江戸の内(作者不詳)」 しめて5000円の激安ツアー。本当に江戸を感じるなら、上野、両国、本郷の移動は徒歩ということになるのだろうが、現実的にはとても無理。 江戸情緒を堪能するには健脚が大前提なのである。
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