763.パイ(2016.3.28掲載)
知人の強い勧めで、2013年公開の米国映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日間」を観た。 封切り当初は、「どうせトラと少年の友情物語を軸にした漂流譚に違いない」とパスしていたのだが、なかなかどっこい深い映画だった。 トラと「二人きり」になるまでの展開が興味深い。 乗っていた船が遭難して漂流が始まった救命ボートには、当初、シマウマ、ハイエナ、オランウータン、トラ、そして主人公のパイがいた。脚を骨折していたシマウマをハイエナが襲い、それに怒ったオランウータンがハイエナを攻撃するが逆に倒される。そして、ハイエナはトラに食われる。 ところがパイは数年後、「救命ボートに乗っていたのは脚をケガした船員と船のコックと僕の母親と僕の4人だった」と回想する。コックが船員を殺し、それをとがめた母がコックに刺され、怒りに燃えたパイがコックを殺して最終的には一人で漂流したというのだ。 つまり、シマウマ=船員、ハイエナ=コック、オランウータン=母、トラ=パイということ。どちらが正解かはわからないが、漂流はパイの巡礼の旅だったのかもしれないというメタファーを観客に投げかける。終わりのない円周率のように。 このストーリー、奇遇にも私が新入社員研修で実施している「若い女性と水夫の問題」につながるものがある。 登場人物は若い女性、女性の婚約者、婚約者の親友、水夫、老人の5人で、乗っていた船が遭難し、2つの無人島に分かれて流れ着く。婚約者に会いたい女性は、水夫と一夜を共にするという条件を呑んで水夫の船でもう一つの無人島に渡る。しかし、水夫とのことを正直に打ち明けた女性は婚約者に別れを告げられてしまう。そこにつけ込む親友と傍観する老人。 課題「5人の登場人物をいい人順に並べよ」 これはかなり悩ましい。全員悪人のような気もする。研修ではグループ討議を行い、各班で1つの答えを導き出す。さらに各班の考えをすり合わせ、最終的には新入社員全体で1つの回答を得るというもの。 もちろん正解などない。正解がないのが仕事であり、正解がない中で最善策を導き出す模擬会議を体験してもらうという研修である。 次の新入社員研修では、若い女性の名前を「パイ」にする予定である。
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