762.トウキョウですか?(2016.3.21掲載)
日本語を学び始めた韓国の知人から質問を受けた。 「東京って、トーキョーですか?トウキョウですか?」 何のことかわからず固まっていると、矢継ぎ早に次の質問が飛んできた。 「セーキョーですか?セイキョウですか?」「ユーセーショーですか?ユウセイショウですか?」「ガクセーですか?ガクセイですか?」 偉そうに「日本語を教えてやる」と豪語しながらこれらの質問に答えられず、かなりへこんだ。正解は、「話す時はトーキョー、書く時はトウキョウ」だと職場の中国人に教えてもらった。 母音が「お」で終わり「う」が続く時は音を伸ばすらしい。他に「え」+「い」、「ゆ」+「う」、「よ」+「う」で同様の発音となる。こんな母国語の文法、わかるはずがない。その中国人は、伸ばす法則を丸暗記して対応しているのだとか。 そう考えると、幼児の言語能力は天賦の才というほかない。生後6ヶ月で約40種類といわれる母国語の「音素」をすべて認識し、3歳になれば他人と会話ができる。すべての幼児は世界に7000ある言語と800ある音素をすべて認識する能力を持つのだ(音素=単語を構成する音)。 ワシントン大学クール博士の研究によって、この言語獲得能力の仕組みが解明されつつある。 子供の脳が母国語の音を最も覚えやすくなる時期は、母音は生後6ヶ月、子音は生後9ヶ月頃からだが、覚えのいい「敏感期」は2、3ヶ月しか続かない。ただ、ここで第2言語の音に触れると敏感期はさらに長くなる。第2言語の習得は7歳までOKらしく、この時期に覚えると、ほぼネイティブ。 そして、このような幼児の言語習得は、2種類の学習メカニズムを用いていることが明らかになった。 まずは統計処理。話し言葉を理解できない乳飲み子であるが、どの音素がどのくらいの頻度で登場するか大人の会話を統計パターンで解析し、頻出する音素ほど重要であると捉え、それを習得しているのだ。 そして、生コミュニケーション。ビデオ教材での言語習得は不可能であることが証明され、大げさに話す「幼児語」を使った方が覚えが早いこともわかった。 結局、アンパンマンの英語教材ビデオは無駄だったのである。
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