780.ジョージアの夜(2016.7.25掲載)
おっさんだけでカラオケを熱唱していると、宴の中盤あたりでたいてい尾崎豊の「15の夜」が飛び出してくる。 そして、2番の歌詞「100円玉で買えるぬくもり熱い缶コーヒー握りしめ」のところで全員歌の世界に没入。缶コーヒーのぬくもり、わかるなぁ。 1989年の消費税導入で110円になっても、税率が上がって130円になっても、自販機の前に立てば15の夜なんだ。 19の朝、福岡に住む親友を訪ねた私は、いきなり「幽霊坂」なる秘境に連れて行かれた。福岡県遠賀郡岡垣町の山中にあるこの坂は、目の錯覚で登り坂のように見えて実は下っているというふしぎ坂。さっそく缶コーヒーの空き缶を置いてみると、見事に坂を登り始めた。超常現象特番的摩訶不思議体験。ひとしきり転がした後、引力に逆らった缶をごみ箱に投げ込んだ。近辺に自販機はないが、ごみ箱の中の大半がシャコタンジョージアだった。 シャコタンジョージアとは、ショート缶(190g)ジョージアが世の中に登場した頃の俗称。これで火がつき、ジョージアは先駆者UCCをぶっちぎってシェア43%のガリバー商品となった。最近でこそサントリーのBOSSに猛追されているが、缶コーヒー7390億円市場のトップは揺るがない。 ところで、件の親友は寝ても覚めてもシャコタンジョージアというヘビーユーザー。1日10本の爆飲で年間40億本というジョージアの実績に貢献し、体重10kg増というおまけもついた。缶コーヒーの糖分は、ショート缶1本で10〜20g程度。最高で砂糖大さじ2杯分くらいだから、1日10本飲めば10kg増も仕方ない。 全国に約257万台あるという飲料自販機のうち、約83万台がジョージアを売るコカコーラグループ。街角の誘惑にはなかなか勝てないが、ジョージア缶コーヒーにトイレ洗浄剤の香りが微量含まれていることを話したら、ちょっとだけ親友の爆飲ペースが落ちた。 クセのある香りでファンをつかむ「香り戦略」として、ジョージアエメラルドマウンテンには、「サンポール」と同じ香料が配合されているのだ。
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