903.塩と砂糖(2019.1.21掲載)
減塩低糖低脂肪。 昨今の健康志向でやたらと悪者にされる塩と砂糖であるが、今年は調味料としての素晴らしさを再認識して賢く使ってみようと思う。世界的に見ても、日本は塩と砂糖の種類が豊富な国なんだし。 塩は世界最古で、紀元前5千年頃の古代文明から最も多くつくられてきた調味料。給料を意味する「サラリー」はソルトに由来するくらいだから基本中の基本である。 原料によって「岩塩」「海塩」「湖塩」の3種類に分類され岩塩が約6割を占めるが、国産品はほとんどが海塩。海に囲まれた日本では8世紀頃に塩田による本格的な塩づくりが始まった。 塩饅頭で有名な赤穂市でも平安時代の塩田遺構が発掘されている。ちなみに、「赤穂の塩饅頭」の塩分は0.55%でポテトチップスの約半分。意外と低い。 一方の砂糖は紀元前5百年頃にインドで作られ、8世紀に中国から日本にもたらされた。 現在流通している砂糖は、ほとんどが原料の結晶と糖蜜を遠心分離器で分けた「分蜜糖」で、サトウキビなどの原料をそのまま煮詰める「含蜜糖」は黒砂糖と和三盆くらい。 分蜜糖の代表格は世界的にはグラニュー糖だが、なぜか日本では上白糖。砂糖に1.3%の転化糖(ブドウ糖と果糖の等量混合物)を加えて甘味を強化した上白糖は和食に合うが、他国ではほとんど使われていない。 そして、料理の際は「さしすせそ」の教訓通り砂糖が先で次に塩を入れる。分子量が342と大きめの砂糖を先に入れておかないと、分子量58.45で小回りの効く塩が先では食材が塩で満たされてしまい、砂糖の入るスペースがなくなるのだ。 ちなみに、酢、醤油、味噌の順番は浸透度合いというより風味の問題。味噌を最後に入れないと、いい香りのおふくろの味噌汁は味わえない。 塩と砂糖。塩味があればこその甘いあんこ。そんな人間を目指したいと思う初春なのである。
\\\\
|
column menu
|