902.人生案内(2019.1.14掲載)
読売新聞のお悩み相談コーナー「人生案内」が好きで、毎日愛読している。 自分が相談されたらどう答えるだろうかとリアルにシミュレーションしながら読み進み、回答を見る。 回答者は精神科医、弁護士、カウンセラー、作家などさまざまだが、いつも感心する回答ばかりで、本来「解消」するしかない悩みを「解決」へと導いてくれる。 特にすごいのが作家の出久根達郎先生。ぶっきらぼうに突き放しながらも深い愛で包み込む回答に、毎回うなるしかない。 高校3年女子の相談… 別れた彼に新しい彼女ができました。彼女に憎悪の念がわいています。彼への執着心はもうありませんが、仲良い2人を見ると見下されている気がして彼女のことが嫌いです。どうすれば心が楽になるのでしょうか。 出久根達郎先生… 心が楽になる方法?何を言っているんですか。大いに苦しむのです。のたうちまわるほど苦しむ。あなたは嫉妬の恐ろしさを身をもって学びました。恋の効用です。彼女を見返してやるとは思いませんか?例えばもっと優れた恋人を作る。そのためにまず人格を磨かなくては。人は苦しむことで成長するのです。 40代の男性医師の相談… 弱者に優しく接することができない自分が嫌でたまりません。病気の人に対し病気になったのは自業自得だと思うし、他人の失敗を見るとイライラします。私自身あまり頭はよくありませんが、資格があるため安定した職に就き社会的には恵まれています。ただ自分のことが情けなく幸せとは思えません。 出久根達郎先生… 弱者に批判的なのは、かつて弱者であった自分を見るようだから。あなたは大変な努力で弱さを克服したから、打ち勝つことができない人間が許せないのですね。でもね、誰もが強くありたいと頑張ったのです。好きこのんで弱者になったのではない。あなたは特別幸運だったのです。選ばれて恵まれた人は、そうでない人の面倒をみる役目があります。あなたに欠けているのは想像力です。苦しみを思いやる心は想像力から生まれるのです。 女子高生には「もっと苦しめ」と愛のムチ。中年医師には「思いやりには想像力が必要」とのお導き。スーパー回答者出久根先生はすごい。 部下が結婚の相談に来ても、「結婚したら収入の10分の1しか自由に使えなくなるよ」などと俗な回答しかできない自分を反省するのであります。
\\\\
|
column menu
|