905.アルベド(2019.2.4掲載)
最近、農林水産省の「和食給食応援団」プロジェクトで小学校を訪問する機会が増えた。 先日も愛媛県内の小学校を訪問したのだが、そこの給食の献立表に「ニューサマーオレンジ」を見つけ、驚いた。ニューサマーオレンジといえば、宮崎特産の柑橘類「日向夏」の別名。宮崎では結構メジャーな果物だが、この果物の味とその正しい食べ方を知っている人は少ないんじゃないか。 以前、宮崎出身の同僚から日向夏の正しい食べ方を伝授され食べたことがあるが、「給食で出して大丈夫なのか」という心配をしてしまった。 というのも、日向夏は柚子のような香りとグレープフルーツのような酸っぱくて苦い大人の味。おまけに正しい食べ方とやらが、あまりにマニアックだったからだ。 まず、リンゴのようにナイフで外側の黄色い皮を薄くむく。すると、アルベドと呼ばれる白い綿のような部分(1センチ近くある)が出てくる。次に果実を左手に持ち、ナイフを使って実をそぎ落とす。 昭和ネタで恐縮だが、「ワンパクでもいい、たくましく育ってほしい」と言いながらハムをナイフでそぎ落とすCMをイメージしてもらうといい。 この時、アルベドと実の部分を1:1にするのが生粋の宮崎人だと友人は言っていた。独特の酸味がアルベドで緩和される絶妙のバランスらしい。 私もやってみたが、なかなかうまくいかない。ナイフの切れ味が悪いのか実がぐじゃぐじゃになってしまい、せっかくの果汁がすっかり流れ落ちてしまったりする。 こんな手ごわい果物がなぜ学校給食に出るのか。小学生はどんな気持ちでアルベドを口にするのか。それに、イラン人の名前みたいな「アルベド」という響きも何となく謎めいている。 そういえば小学生の頃、遠足のおやつとして学校から支給された「ボンタン飴」を、「何でボンタンなんだ」と思いながら食べていた。このヤンキーのズボンみたいな名前も、これまた柑橘類の「文旦」に由来するのだが、日向夏にしてもボンタン飴にしても、学校が選んだ食材なのだから、きっとそこには奥深い学問との関係があるに違いない。 アルベドの謎は深まるばかりである。
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