906.マシュマロ(2019.2.11掲載)
中学生の頃、森永エンゼルパイをお腹いっぱい食べたかった。 2個入り1箱100円。高くて手が出なかった。100円玉の神々しい輝きは今とは比べものにならないほどありがたく、気軽に差し出す勇気など誰も持ってはいなかった。 そして、「一瞬で終わってしまうエンゼルパイより、50円で結構長持ちする横綱あられの方が家族みんなで楽しめる」と幼心に涙ぐましい家族愛。ゴックンつばを飲み込んで、エンゼルパイを我慢する日々だった。 先日、40年越しの念願がかなって、エンゼルパイを食べた。 360円で8個入り。いやというほど食べて昔の借りを返そうとしたが、特に何の感動もなかった。そして、あのサンドされたマシュマロに何となく違和感を覚えた。なんでマシュマロなんだろう。 もともと、湿地(マーシュ)に群生するアオイ属植物マロウの根の粉末をゼリー状にして食べたのが始まりだというマシュマロ。一時期、3月14日のホワイトデーにマシュマロを贈ろうという業界の働きかけがあったが、今そんなことは誰もしていない。今日の商業戦略にも乗り遅れてしまった悲しいマシュマロ。 ところが、そんなマシュマロのありがたさを再認識する事件があった。 仙台に出張した時、東北限定「エンゼルパイさくらんぼ味」をもらって食べたのだが、サンドされていたのはマシュマロではなく、ピンク色の生クリーム。 あのマシュマロのぐにゃぐにゃ食感がない上に、生クリームが濃厚すぎて全部食べられない。地域限定品特有の「押しつけ」以上にくどい味だった。 なくなって初めてわかるマシュマロのありがたさ。 時々、運動会で、粉の中のマシュマロを手を使わずに食べる競技に登場したりする昭和なやつ。 そんな微妙なポジションの食材なのである。
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