984.不当表示(2020.8.31掲載)
キリンビバレッジは、輸入ミネラルウォーター「ボルヴィック」の国内販売を年内で終了すると発表した。 好きな味だったのに残念だし、味以上に商品特徴が素敵だった。 「フランス・オーヴェルニュ地方の豊かな自然が育んだナチュラルミネラルウォーター、ボルヴィック。その水源にそびえるピュイ・ド・ドーム火山は、6つの火山層で大量の雨をゆっくりとろ過していきます。そうやって生まれた水は、無殺菌のまま飲むことができます」 ポエムですね〜、メルヘンですね〜。 ふと、10数年前にハウス食品が「六甲のおいしい水」の不当表示で公正取引委員会に怒られた事件を思い出した。不当表示の対象商品は売上にして過去最高の約367億円。優良商品が挙げられたということで、業界に震撼が走った。 以下が問題の表示。 「六甲山は花崗岩質で、そこに降った雨は地中深くしみ込み、幾重にも分かれた地層の割れ目を通っていく際に花崗岩内のミネラルを溶かし込み、長い時を経て、口当たりの良い、自然なまろやかさが生きている良質の水になります」 これで不当とは厳しすぎる。市場にはもっとあやしい水があるではないか。電解水、パイウォーター、水晶水、始元水…。 ミネラルウォーターの味の違いなんて微妙なんだから、叙情コピーでの差別化大いにけっこうではないか。 六甲の花崗岩もオーヴェルニュのピュイ・ド・ドームも、我々はその情緒を飲み干し、山の神への畏怖と遙かなる異国の大地に思いを馳せるのである。もちろん偽装はいけないが、根拠がある商品に対して消費者行政という錦旗を乱発するのはどうかと思う。 こうなったら、リスク回避策としてキャッチコピーの表記を廃止し、商品名だけで中身を表現するという手もある。件のハウス食品は、中身が伝わる商品名を上手く付けることで有名である。 とんこつラーメン「うまかっちゃん」、とうもろこし系スナック菓子「とんがりコーン」、えんどう豆系スナック菓子「ジャック」、そして「六甲のおいしい水」。 十分に中身がわかる、正当表示なのである。
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