988.小野田少尉(2020.9.28掲載)
先日、知人が暮らす人口3万人の某市が温泉掘削に挑戦し、1000メートル掘ったあげくに失敗。見事、血税1億円を地底に捨てたという話を耳にした。 あぁ、もったいない。こんな時、小野田自然塾の理事長がご存命だったら…。 理事長とは、大東亜戦争終結から29年後にフィリピン・ルバング島から帰還した小野田寛郎元少尉のこと。小野田さんがある番組で、30年のジャングル生活で身につけたノウハウを語っていた。 「山の稜線を見れば水脈の在処がわかります。ブラジルで始めた農場でも150メートル足らずの掘削で2基の井戸を掘り当てました」 小野田さんはすごい。 ルバング島で30年戦い続けた小野田さんは1974年、元上官である谷口少佐の任務解除命令を受けて日本に帰還。天皇陛下への拝謁を断り、ジャングルで戦死した部下の墓参りに向かう。 また、政府から支給された1000万円の慰労金も、戦死した人たちに申し訳ないと靖国神社に寄附してしまった。 このような、戦前なら当たり前だったであろう日本人の精神性が、退廃しきった当時の日本人には理解されず「軍国主義の亡霊」と揶揄される。 小野田さんは変わり果てた日本が嫌になり、「一個人として生きる力を日本に見せつける」と、翌年ブラジルに移民。そして、辛苦の末に牧場経営を成功させる。 小野田さんはえらい。 小野田自然塾は、そんな小野田さんが日本の将来を憂い、子供たちのために平成元年に設立した野外体験の塾なのである。 火のおこし方、昆虫の食べ方、水の集め方など、ジャングルで30年生き抜いた小野田さんが伝える「生きる力講義」。説得力あるだろうな。 「どんな時代、どんな状況でも生きていける強さを持ってほしい」 軍人であったことがうそのような穏和な笑顔で、しかし、背筋はしゃんとしていた小野田さんは、2014年に91歳で亡くなった。 温泉掘りに1億円かけるのなら、小野田自然塾の入塾券を配布したほうが、よっぽど市民のためになったのにと思った。
\\\\
|
column menu
|