15. 黒の威厳 (2001.05.01掲載)
カラー柔道着の違和感は相変わらずある。カラー柔道着といっても、当初恐れていたピンクだの紫だのという畳に不似合いなトロピカルカラーではなく、とりあえず見慣れた剣道着のような紺色だったが・・・。 この件に関して私は賛成でも反対でもないが、黒帯の立場はどうなるんだという心配がいつもつきまとう。カラー柔道着論争の根底にある白という色を神聖視してきた日本人のスピリッツは、また同様に黒という色にもある種の威厳を感じており、それ故の黒帯ではなかったのか。白い柔道着に真一文字に結ばれた黒帯が有段者のステイタスであり、入門者の道しるべであったはず。それが、紺色にもみ消されそうな黒帯となると、なんとなく志も腰くだけになりそうな気がする。 いや、待てよ、もしかすると、今の日本人は白や黒に対して昔ほどこだわっていないのかもしれない。神聖視していた白へのこだわりの薄れは、色シャツビジネスマンの増加や白い車の減少に現れ、黒に対する威厳の低下は、黒い学生服から紺のブレザーへ、黒いランドセルからチェックのリュックサックへという流れとして露呈しているのだ。 そうそう、黒へのこだわりの薄れの最たるものとして忘れてならないのが、なんといっても茶髪(ちゃぱつ)の大流行である。かつて黒髪は美人の必須アイテム。私は男だというのに、「ひじきを食べれば髪が黒くなる」と言っては母親にひじきを食べさされたことを思い出す。 この「ひじき黒髪説」に根拠があるのかどうかは定かでないが、もし本当だとすると今のコギャルたちは、「てゆーか、せっかく染めた髪が黒くなっちゃう」とか言って、ひじきを食べなくなるのではないか。鉄、カルシウム、食物繊維という、女性に不足しがちな成分を豊富に含むひじきを食べないのはもったいない。ならばこれを逆手にとって、鉄、カルシウム、食物繊維を豊富に含みながら、これを食べれば髪が茶色になるという食品を開発すればヒット間違いなし。染めることなく茶髪になれば髪を傷めることはないし、染めた茶髪ともとからのの茶髪は美容師がさわればすぐにその違いが解るから、学校で先生にしかられる心配もない。そんな食品が開発される日が、はたしてやってくるのか。いや、きっと来る。 もしかして、私も茶髪が好きなのかもしれない。
|
column menu
|