19. アルベドの謎 (2001.06.04掲載)
小学校の給食の献立表に「ニューサマーオレンジ」を見つけ、驚いた。ニューサマーオレンジといえば、宮崎特産の柑橘類「日向夏」の別名。宮崎では結構メジャーな果物だが、この果物の味とその正しい食べ方を知っている人は少ないんじゃないか。 以前に、宮崎出身の友人から日向夏の正しい食べ方を伝授され何度か食べたことのある私は、「給食で出して大丈夫なのか」という心配をしてしまった。というのも、日向夏はユズのような香りとグレープフルーツのようなちょっとすっぱニガイ味で、どちらかといえばアダルト路線。おまけに友人から伝授された正しい食べ方が、あまりにマニアックだったからだ。 その食べ方とは、まず、リンゴのようにナイフで外側の黄色い皮を薄くむく。すると、アルベドと呼ばれる白い綿のような部分(1センチ近くある)が顔を出す。次にそれを左手に持ち、ナイフを使って実をそぎ落とすのだ。ちょうど、「ワンパクでもいい、たくましく育ってほしい」と言いながらハムをナイフでそぎ落とす、あのCMをイメージしてもらうといい。 この時、アルベドと実の部分が1:1になるようにそぎ落とすのが生粋の宮崎人だと友人は言っていた。独特の酸味がアルベドで緩和される、絶妙のバランスらしい。 私もやってみたが、このそぎ落とす作業がなかなかうまくいかない。ナイフの切れ味が悪いのか実がぐじゃぐじゃになってしまい、せっかくの果汁がすっかり流れ落ちてしまったりする。 うーん、こんな手ごわい果物がなぜ学校給食に出るのか、ますます分からなくなった。小学生はどんな気持ちでアルベドを口にするのだろう。それに、イラン人の名前みたいな「アルベド」という響きと学校給食の関係も何となく謎めいている。 そういえば私も小学生の頃、遠足のおやつとして学校から支給された「ボンタン飴」を、「何でボンタンなんだ」と思いながら食べていたような気がする。このヤンキーのズボンみたいな名前も、これまた柑橘類の「文旦」に由来するものであるが、日向夏にしてもボンタン飴にしても、学校が選んだいわゆる文部省推薦の食品なのだから、きっとそこには奥深い学問との関係があるに違いない。 謎はますます深まるばかりである。
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