22. ニンニクと正露丸 (2001.06.18掲載)
東京は目黒に、とてつもなく旨いワタリガニ料理の店がある。この店の売りはニンニクベースの味付け。カニとニンニクという意外な組み合わせではあるが、ニンニクのコクがワタリガニの旨味を引き立て、和風でも洋風でも中華でもない独特の料理に仕上げている。 ワタリガニに限らず、ニンニクを使うとさまざまな料理にコクを付けることができる。だが問題はそのニオイ。あの強烈なニオイが料理の幅をせばめていることも事実である。その結果、無臭ニンニクやニンニクのコク味成分だけを取り出した調味料などが商品化され、売り上げも上々らしい。 だが待てよ、あのニンニク臭なくして本当にニンニクのコクが得られるものなのか。それは、ニオイのない正露丸のようなもので何となく頼りない。私は人並み以上に胃腸が弱く、しょっちゅう正露丸のお世話になっているが、あのニオイだけでほとんどの腹痛は治ってしまう。たぶん糖衣錠では治らないんじゃないか。 つまり、ニンニクにしても正露丸にしても、ニオイが強烈という欠点がそのまま長所になるわけで、いわゆるクセのある憎めないやつなのだ。 欠点が長所になるということで思い出したことがある。それは小学生の時によく書かされた「自分の長所と短所」ってやつ。いつも適当なことを書いていたような気がするが、今なら長所と短所の欄には同じことを書くと思う。短所になるくらい極端なことじゃないと長所とは言えないのだ。 例えば長所の欄に「超キレイ好き」と書くからには、「いつも引き出しの中を整理整頓してます」てな中途半端なレベルでは世間は許さない。「道端のゴミを見るとクルマから降りてでも拾ってしまう」くらいのポリシーで、短所の欄に「病的な潔癖症」と書けるくらいでないと胸を張って長所とは言えない。 ちょっと熱くなってしまったが、ニンニクも正露丸もそういう見方をしてやると結構たのもしく見えてくる。おまけにその長所と短所の向こうに、ちゃんと化学的に立証された生理活性があるのだからニクイ。 そして胃腸の弱い私は、ニンニクたっぷりの料理の後には決まって正露丸のお世話になるのだからこれまたニクイ。
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