27. 給食のにおい (2001.07.23掲載)
先日、ある小学校で学校給食を食べる機会があった。その日に生徒が食べるメニューと同じものを教室の机で食べたのだ。私の場合、給食を食べていたのは小学校卒業までだから、二十五年ぶりの再会ということになる。 二十五年間でどれだけ様変わりしたのか、ちょっとだけ期待しながら食べてみた。おなじみのひょろ長い給食のパンとパックの牛乳。そして、大きいおかずと小さいおかず。 味は少し上品になったような気がしたが、あの独特のにおいだけは変わっていなかった。食器のにおいのような調理場のにおいのような給食のにおい。それと、パンのにおいも当時のままで、二十五年間のブランクを感じさせない懐かしいにおいだった。 ところで、どういうわけか給食のパンとそのにおいだけは給食以外でお目にかかったことがない。思い切ってコンビニあたりで「給食のパン」てなネーミングで売れば、結構レトロ感覚で売れるのではないか。 と思ったが給食というものに対する思いは人それぞれであり、やっぱり難しい。 放課後まで残って大嫌いなクリームシチューを食べさされた。 小袋入りのマーガリンで遊んでいて破裂してしまい、顔中マーガリンだらけになった。 1クラス分の木箱入りのパンを給食室から運ぶ途中に渡り廊下でひっくり返し、「皮をむいて食べてください」と全員の前で謝った。 などの暗い事件を連想してしまい、給食という単語を見ただけで食欲がなくなってしまう人も多いと思う。 それに、世代が違えばメニューも違う。脱脂粉乳というフレーズに涙ぐむ世代。くじらの竜田揚げをもう一度食べたいと思う世代。牛乳びんがテトラパックに変わり、そのたたみ方に命を懸けた世代。さまざまである。 世代を映す鏡は時に年齢を暴露する凶器となり、おじさんたちの立場を悪くする。だから、給食ネタはそっと胸にしまっておけばいい。商品化などもってのほか。 どうしても思い出したい人は、子供の参観日の時なんかに給食室をのぞいてみてはどうか。給食のにおいは、きっとあの時のままだと思う。
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