29. 花かつお (2001.08.06掲載)
親戚の男の子(小学校5年生)が、「理科の自由研究で花かつおが踊るしくみについて調べるから材料を提供して」と言ってきた。たこ焼きやお好み焼きに花かつおをふりかけた時、ふわふわと動くあの現象を調べるらしい。 結論から言うと、花かつおのように水分が低く、なおかつ水分を吸収しやすい軽い物体であればたいていのものは踊る。薄手の紙を小さく切ってアツアツのたこ焼きの上にのせてやると、それらしく踊るのだ。 この、花かつおが踊るというまさに日本人の食欲をかき立てる定番シーンも、よく見ると蒸気があたる反対方向に花かつおがまるまっているだけの単純な現象。わかってしまえば味気ないが、小学生の自由研究としてはなかなかマニアックでおもしろい。「坊主、花かつおの奥は深いぜ」と言って、とびきり薄く今にも踊りだしそうな花かつおを100?ほど渡してやった。 そう、花かつおの奥は深い。 一見、かつお節を削れば簡単に花かつおができそうなイメージがあるが、たこ焼きの上で踊るような薄さに削るにはそれなりの技術が必要となる。花かつおの厚みは品質を左右する最大のポイントだけに、最高のこだわりで製造するのだ。 ただ、その企業秘密を明かすわけにはいかず、ここでは「厳選した原料を当社独自の技術で丹念に仕上げました」という何にでも使える実体のない無責任な定型コピーで表現させてもらう。 まぁ、とにかく薄いのだ。数字で表せば約20ミクロン。つまり1ミリの100分の2。身近なもので言えば、ティッシュペーパーの二枚一組のやつをはがした一枚分の厚みである。 たしか、ティッシュペーパーも花をイメージしたCMがあったように思うが、かつお節は動物性たんぱく質のカタマリ。それが植物の花になったり踊るという動詞で擬人化されたり。 そう考えると、花かつおは伝統食品でありながら結構前衛的な食品ということになるのではないだろうか。
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