30. カジュアル (2001.08.16掲載)
東京には力みがない。肩の力が抜けているというか自然な感じというか。逆に言えば、地方都市はちょっと力が入りすぎているんじゃないか。 例えばファッション。雑誌やブティックのディスプレイから飛び出してきたような、いかにも「お金かけてます」という感じのコテコテスタイルが地方都市の典型的なおしゃれ人だとすれば、東京の洒落人は、GパンとTシャツに代表される超カジュアルなやつ。どちらがいいというわけではないが、カジュアルはその気楽さがいい。 そして商店街。東京で人の集まるところにアーケードはない。地方都市は平野部が少ない、交通機関が未発達である、などの諸事情があるとは思うが、無理矢理アーケードに人を閉じこめるのはどうかと思う。 公園にしてもそうだ。土と緑があれば自然に人は集まるのだから、強引に客寄せのシンボルのようなものを公園内につくらなくてもいい。企画者がむりやり目的を提示するからおかしくなるのだ。 そう考えると、地方都市が東京から学ぶべきことはバブリーな建造物やシステム化されたテーマパークではなく、そのカジュアルなあいまいさではないだろうか。 渋谷やお台場に人が集まるのは、適当に無目的に行ってもぶらぶら時間がつぶせるからだと思うし、そういうアバウトな設定というか、あいまいな感覚というか、無意識のうちにしっくりはまってしまうスタイルに人は引きつけられる。 地方都市の在り方というような大それた話をしてしまったが、この話は、食品メーカーの新商品開発に対する考え方にも共通するものである。プロジェクトチームを組み、市場調査や販促活動にかなりの資金を投入した戦略的商品より、一開発員の普段着のひらめを商品化したものの方がヒットする場合が多い。 風呂上がりのビール片手に「こんなおつまみがあればいいな」と思い、こたつに足を入れて「こんなおでんができたらいいな」と考える。ドラえもんに頼んでしまいたくなるような気楽な発想でいい。サクセスストーリーは成功してから考えるものなのだ。 カジュアルな商品はきっと売れると思う。
|
column menu
|