31. はたらくひとたち (2001.08.20掲載)
先日、県内某所の日曜朝市を歩いた。眠い目を覚ましてくれる威勢のいいおじさんのかけ声に対面販売復活のきざしを見るつもりだったが、朝市は予想以上に静かだった。それがその朝市独特の雰囲気なのかもしれないが、淡々と商いをする情景は「人情味のあるコンビニ」という感じで、イメージしていた朝市とはかなり違っていた。 さらに意外だったのは、おじさんよりおばさんの数の方が多かったということ。さおばかり片手に瀬戸内の旬を届ける魚屋のおばさんや、切り花を軽快に新聞紙でくるむ花屋のおばさん。女性の社会進出とか、男女雇用機会均等法などというお役所のかけ声がとうてい届きそうもない朝市で、働く女性のパワーを目の当たりにしてしまった。 昔、NHKの教育テレビで「はたらくおじさん」という番組を放送していたのをご存じだろうか。小学生の男の子(確かトンちゃんだったと思う)と犬のペロくんが気球に乗って街を探検するというオープニングだった(途中、ペロくんが気球から落ちそうになる)。 毎回いろいろな職業の人にスポットを当ててその内容を紹介し、小学生に社会のしくみを学んでもらうという主旨の番組だったが、途中でタイトルが「はたらくひとたち」に変わった。NHKが自主的に変えたのか、「働いている人はおじさんだけではない」という視聴者からのクレームに対応したのかは定かでないが、確かに田舎の日曜朝市を歩いただけでも「はたらくおじさん」じゃマズイということがすぐにわかる。 そして、「はたらくおじさん」という言葉が当てはまらない人を、もうひとり朝市で見つけた。どう見ても朝市には不似合いな、キチッとスーツを着こなした白髪の紳士が健康食品を売っていたのだ。 健康食品はスーツの方が売りやすいのか、それとも他に着る服がなかったのか。「糖尿にはコレですよ、奥さん」と物静かに瓶入りの錠剤を差し出す姿には、「はたらくおじさん」より「あやしいおじさま」という単語の方がよく似合う。 まぁ、その紳士があやしいのか売っている健康食品があやしいのかは別として、とにかく朝市にはいろいろな「はたらくひとたち」がいるのだ。
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