33. やしの実 (2001.09.03掲載)
日本以外でも料理にかつお節を使う国がある。それはスリランカ。激辛のスリランカ料理に、かつお節を使うのだ。 スリランカのかつお節は主にモルジブ産のもので、地元では「オウバラカダ」と呼ばれている。日本のかつお節より水分が高く香りも少し異なるが、日本のかつお節のルーツとされている。 スリランカの家庭では、この「オウバラカダ」を石臼でつぶし、調味料としてさまざまな料理に使用するそうだ。が、スリランカ料理が何なのか、「オウバラカダ」がどういうものなのかさっぱり分からない。そこで、日本食糧新聞社発行の百歳元気新聞(それにしても強引なネーミングだ)に紹介されていてた、新宿にあるスリランカ料理の店を訪ねてみた。 店内にはスリランカをイメージさせるエキゾチックなBGMが流れていたが、タイ風、あるいはインド風とも取れなくはない。そして、店員は全てスリランカ人。これまたタイ人と言われても分からない。 テーブルに着き、「かつお節を使った料理ください」と言うと、「それはポルサンボールね、ライスと一緒に食べるよ」と片言の日本語。そして、十分ほどしてライスと一緒に出てきたその「ポルサンボール」とやらは、そぼろタイプのふりかけのようなもので強烈なオレンジ色。一皿三百円の激辛ふりかけだった。 そぼろ状のものは何とココヤシの実。ココヤシの実を砕いたものの中にかつお節の粒が入っているのだが、こんな激辛じゃかつお節の味もへったくれもない。勇気を出して店員に、「辛くてかつお節の味なんか分からないんじゃない」と迫ってみたが、「辛いよ。でもかつお節入れないとポルサンボールじゃないね」と、白い歯を光らせながら丸め込まれてしまった。 スリランカのかつお節とココヤシとのかかわりは、料理だけではない。煮たカツオを煙でいぶす際のくん材として、ココヤシの木が使われるのだ(日本では主に樫)。南国イメージの典型とも言えるココヤシと、日本料理の心かつお節。この意外な取り合わせがこの国の文化なのだ。 スリランカのかつお節のことをもっと知りたくなり、店を出る時、「オウバラカダもらえませんか」と言ってみた。「それはダメよ」と白い歯が笑っていた。
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