55.廃版の研究(2002.02.13掲載)
廃版の研究 「敗因の研究」という本がある。スポーツの世界で敗者になった選手やチームにスポットを当てて取材を重ね、何故の敗者なのか、その共通項を探りビジネス成功の一助にしようという日経新聞運動部編集の本である。 松坂大輔率いる横浜高校に5点差を逆転された明徳義塾。無念の篠原シドニー五輪。ドーハの悲劇日本代表イレブン。長嶋巨人痛恨のラストイヤー等々、30あまりの敗者が取材されているが、その共通項は見あたらない。一般論として語られる、プレッシャー、経験不足、おごり等は皆無。トップレベルの試合は、それらをはるかに超越したところで展開されているに違いない。 強いて共通項を探るなら、敗者はかなり早い段階から我が身の敗北を察知しているものだということ。それは動物的カンというより、自己の状態と世界のレベルを冷静に分析した結果の科学的客観性ともいえる。 共通項こそないが、各々の事例から学ぶことは多い。まさに、「勝者は何も手に入れない」し、「負けて覚える相撲かな」なのである。 「廃版の研究」という本を書いてみたいと思う。商品開発の世界で発売後すぐ廃版になった商品にスポットを当てて調査を重ね、何故の廃版なのか、その共通項を探り明日のヒット商品につなげようという自己満足の本である。 アスパラガスの茎を焙煎して抽出した缶入り飲料「アスパラ茶」。 「どこで作るの?」と役員試食で玉砕した「アイスクリームの天ぷら」。綿密なマーケティングも意味を成さなかった「味噌汁がおいしくなるだし削り」等々、30あまりのネタはあるが、その共通項は見あたらない。一般論として語られる、マーケティング不足、顧客満足度不足、値頃感のなさ等は皆無。トップレベルと信じて止まない商品力は、それらをはるかに超越した市場原理の間で揺れたに違いない。 強いて共通項を探るなら、開発者は最後まで「いつかきっと売れる」ともがき続けるものだということ。それは生みの親であるという動物的執念というより、自己の開発力と市場のニーズを冷静に分析できていない非科学的思い込みともいえる。 共通項こそないが、各々の事例から学ぶことは多い。まさに、「売れたらいろいろ手に入れる」であり、「売れてなんぼの開発かな」なのである。 ちなみに、平成13年度の食品ヒット大賞は、「アサヒ本生」と「まろ茶」でした。
|
column menu
|