56.バレンタインデーキッス(2002.02.18掲載)
バレンタインデーキッス 昭和56年2月14日、207ホームの教室に入ると待ってましたと女子一同がチョコをくれた。素直にうれしかった。当然、クラスの男子全員に行き渡る思いやりの「形式チョコ」。まだ「義理チョコ」という言葉がなかった時代の、3月14日に義理チョコ返しの義務がなかった時代のほのぼのシーンだった。 平成14年2月14日。こんな日に渋谷を闊歩してしまった。やっぱり来るんじゃなかった。「クリスマスほどじゃないだろ」と、たかをくくっていたが甘かった。街ゆくカップルのラブリーさは、義理チョコしか当てのないオヤジには少々キツイ。 そして、道玄坂の信号待ちで、彼女のことを「ハニー」と呼ぶバカ男を発見した。全く不埒。我らがバイブル、三島由紀夫著「若きサムライのために」を渡してやろうかとも思ったが、オヤジ狩りがこわいのでやめた。 ハニーとはハチミツ。ハチミツはそんなにべたべたひっついちゃいないよ。ハチミツの甘味を解く鍵は「はなれる」こと。これは、成分の一つである転化糖が、花の蜜の砂糖をブドウ糖と果糖という別々の単位に離したものだから。つまり、ハチさんは、砂糖をブドウ糖と果糖の1:1混合物である転化糖に変えるのだ。2つの糖がひっつくと砂糖、離れると転化糖。そして、転化糖になると甘味が砂糖の約1.3倍になる。これは果糖の甘味が砂糖の約1.7倍、ブドウ糖が約0.7倍であることに起因しているのだ。ややこしいけど、離れると甘くなるって不思議だよね。 件のカップルに「ひっついているばかりがラブリーじゃないぜ」と、離れても甘いハチミツを渡してやろうかと思ったが、オヤジ狩りがこわいのでやめた。 ドラッグストアの有線から、国生さゆりの「バレンタインデーキッス」が流れていた。
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