57.レプトケファルス(2002.03.04掲載)
レプトケファルス サラリーマンに聞いた「なりたい職業ベスト3」というのがある。第1位=プロ野球の監督、第2位=オーケストラの指揮者、第3位=馬主。ふむふむ、確かに3つとも魅力的な職業だ。それぞれ、スポーツの努力、芸術の努力、金儲けの努力が結果として実を結んだ姿である。わたしもなりたい。ソニーの経営者でありながらタクトを振っていた大賀典雄氏なんて、さしずめサラリーマン憧れの的だな。 我が職場でも同様のアンケートを取ってみたが、意外にも「そば屋の大将」「うなぎ屋の大将」という回答が1票ずつあった。確かに「脱サラしてそば屋」というのがはやっているとは聞いていたが、うなぎ屋はキツイぞ。なにしろ身開き3年、串打ち5年、焼き一生の修行道。半端な志じゃ続かない。なぜうなぎ屋なんだろう。 てことで、うなぎの老舗、神田「きくかわ」の暖簾をくぐった。 「並」に相当する「うな重イ」が2,500円。ロが3,000円でハが3,500円と、順にうなぎの重量が増えていく(4,000円のニもあるよ)。しかし、イで十分満腹。たっぷり2匹でしろめしは見えない。そして、きくかわ独自の養鰻池を持っているというだけあって、魚質は最高。口に含んだ瞬間とろけて消えた。 ご存知うなぎの生態はナゾだらけ。そこで、仁義を切ってもらうことにした。 「きくかわの軒下三寸借り受けまして仁義を切らせていただきます。手前、生国と発しますところ南方です。サイパン、グアムとリゾートきらめくマリアナ諸島の産湯をつかり、幼名をレプトケファルス。黒潮に流れ流され日本へ、無駄飯食って十余年。産卵の折はお暇をいただき、マリアナまで帰りやす。以後万端お見知りおきのほど、よろしくお頼み申し上げます」 白魚時代の幼名がレプトケファルスで、成人するとうなぎ。なんだか帰国子女みたいでカッコいい。 そんなことを考えながら、肝吸いをすすってみた。
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