63.長寿職(2002.04.08掲載)
最近のヒット商品には、「少年の心」を切り口にしたものが多くある。動物ミニチュア入りのタマゴ型チョコレート「チョコエッグ」。布製の小さなテディベアのぬいぐるみがついたマーブルチョコレート「365日のバースデーテディ」。ベーゴマを現代風にアレンジした「ベイブレード」等々。童心に返った担当者が、嬉々として開発に夜を徹する姿が思い浮かぶ。以前、雑誌でタカラのベイブレード開発担当者をお見かけしたが、38歳には見えない若さを放っていた。ベイブレードのヒットで役員になられていた。 少年の心を持ち続けている人は輝いて見える。かつての野球少年の頂点に立つ巨人の清原選手など、その典型ではないか。デビュー当時、地下鉄の乗り方を知らないとか、家でカブトムシを飼っているなどとその世間知らずぶりを揶揄されていたが、いまや球界の4番打者。軽いスイングでドームの最上段に岸和田魂を運ぶ姿はカッコよく輝いている。 清原選手のように少年の頃の夢を実現した神に選ばれし人は特別な例だが、我々にも少年の心で仕事に臨める瞬間がどこかにあるはず。そういう時は仕事の効率も良く、きっと輝いていると思う。 ところで、この少年の心を医学用語でネオテニーというそうで、成人してからもネオテニー行動が多い動物ほど寿命が長いことが証明されている。その最たる例が人間であり、また、子供っぽい人間ほど長生きするというのだ。いつまでも輝いているから長生きするのかもしれない。 そして、もう1つ面白いデータ。ある研究機関が職業別の平均寿命を調査したところ、ダントツで寿命が長い職業が2つ判明した。それは、画家と生物学者。大人になってからもお絵かきに熱中し、虫や動物を追いかけては滑って転ぶ。いわば超ネオテニー人間ともいえる画家と生物学者が寿命を延ばすというのだ。 我々は画家でも生物学者でもなく、ましてや清原選手でもないが、幼少の頃、夕方暗くなるまで遊んだ経験なら誰にでもあるはず。あの頃の少年の心を持ち続け、ワクワクしながら商品開発に熱中し、キラキラといつまでも輝き続けていれば、きっとヒット商品が生まれると思う。そして、次の世代には画家と生物学者に次ぐ長寿職として、「新商品開発者」の名を刻みたいと願うのである。
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