68.エサと食事の間に(2002.05.13掲載)
今から15年ほど前に、ペットフードを開発して発売したことがあった。犬用、猫用のふりかけで、あらゆるペットフードにふりかけるだけで食いつきがよくなり栄養強化も図れるというもの。おそるおそる参入した新規マーケットではあったが、商品の反応はそこそこよかった。「サンプルでもらったおたくのふりかけを使ってみたが、それ以来、他のペットフードを食べなくなった」というポジティブクレームもあった。 しかし、ペットフード事業は1年を待たずして撤退の憂き目に遭う。失敗の要因はいろいろあったが、ひとことで言えば基本的な単語解釈の違い。ペットフードを「エサ」と考えるか「食事」と考えるかの違いにあった。当然ながら愛犬、愛猫家にとっては「○○ちゃんのお食事」であるが、15年前の我々にはその認識がなかった。よって撤退。けど、「うちの○○ちゃんはおたくのかつおパックしか食べませんのよ」てな声も未だ多く、結果的にペットフードを売っちゃっている状態なのです。 日本には990万匹の犬と750万匹の猫がいて、5世帯に1世帯が犬を、6世帯に1世帯が猫を飼っている(ペットフード工業会調べ)。あっぱれペット産業。しかし、気になる情報もある。ペットを飼っている女性において、ペットへの愛着が強いほど幸福感が低いということを東大の金児恵先生がおっしゃっていた。 薄幸の美女が青山紀伊国屋で愛猫用の「かつおパック(枕崎産極上本枯節)」を購入する。そんなシーンが頭をよぎった。そのかつおパック、おひたしにかけたりして自身も食しているのか。ならばこれほど幸せなペットフードはないぞ。愛猫と同じ食事なんてすごいことだ。 少なくとも、かつおパックをペット用に購入される方に薄幸の美女はいないと思った。
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