82.NG名場面集(2002.08.26掲載)
盆ホリデーの終わりとともに空は高くなり、民放テレビも高飛車で変な特番準備に取りかかる。秋の新番組前にはさむ、「NG名場面集」ってやつだ。ここでひとこと言わせてもらう。NGなのに名場面というところがそもそもおかしい。失敗作という身内の恥を押しつけ視聴率を稼ぐのは、少々傲慢じゃないか。食品メーカーでいえば、工場内で発生した廃棄すべき不良品を集めて堂々と「NGショップ」を開店するようなものである。 工場は常に不良品を出さないよう努力するが、それでも1ppm前後は発生してしまう。つまり100万個に1個。運悪く不良品が発生した場合でも、それが工場の外に出ないよう最大限の注意を払って排除する。NGは絶対出さない。それでもいじめられる食品業界。いいな、テレビ局って。 安全衛生上の問題がない「番組」という商品を食品と同じ土俵で語るのは危険だが、「再放送」は賞味期間切れの返品商品を再度販売するようなものであり、「なつかしの名番組集」にいたっては、20年前の在庫をレトロ品と言ってプレミア販売するようなものである。放送局も番組を作るという観点で言えばメーカーなのだから、0から1を生んでこその収益だと思う。 とはいうものの、基本的に民放は受信料を払わずタダで見るものだから、提供スポンサー以外に文句をつける権利はない。だから、これは文句ではなくひがみ。 店頭で「NG名場面集」をやってしまった乳業メーカー、「やらせ」をやってしまった畜肉メーカー。そりゃ、どちらも悪い。しかし、その後の過剰なまでの排斥運動には同情してしまう。懲罰として撤去させられた何の問題のない商品は焼却処分になるというが、このムダは、おしゃもじおばちゃんも見逃すのか。撤去品を引き取り、基準の甘い東南アジアでの販売を企むブローカーも出たらしいが、善悪はともかく、地球に優しい行為ではないか。 今年の流行語大賞候補になりそうな、「偽装」「産地」「違法」などの単語で間接的に商品撤去を煽った放送局は、それでもNG名場面集をやり続けるというのか。 終わりなき食品業界受難の日々を憂い、ちょっとだけ愚痴らせてもらった。
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