83.ツアコン魂(2002.09.02掲載)
3年前からの地道な説得活動が実り、晴れて従兄弟がハワイで挙式をすることになった。そこで作戦開始。結納の席上、私は満を持して切り出した。 「えー、今回のハワイ挙式ツアー、パスポート、チケットの手配から通訳まで全て私が担当させていただきます」 交換条件である旅行代金親族持ち(おまけに私だけビジネスクラス)を苦々しく了承していただき、怒濤の4日間に向けたツアーコンダクターの日々が始まった。60歳代11人の引率はかなり厳しいが、ごっつぁん旅行の快楽には代えられない。 旅行がらみの悪徳企画といえば、修学旅行で旅館の一室をラブホに仕立て、1時間500円(例のモノ1個5000円)をあこぎにせしめた高2の夏を思い出す。 いよいよ8月14日。関空のゲート進入直前で誰もドルを持っていないことが発覚。「ジャパンマネーは世界中で通用するって聞いたぞ」。そりゃそうだがドルなしはまずい。ツアコン、両替に走る。 8月15日終戦記念日。やはり最大の問題は食事。60歳代11人が納得する食事の手配は困難を極め、「カップヌードルが食べたい」との声にABCストアへ。日本産カップヌードル2.59ドルは高いと、制止を振り切り全員が米国工場産89セントを購入。あれほど言ったのに「変なチキン味でおいしくない」とクレーム。ツアコン、もう一度お湯を手配する。 8月16日自由時間発生。11人を2時間コースのツアーバスに押し込み、唯一の息抜き。ワイキキからタクシーで20分、ワイアラエ通りにある日本人シェフのフレンチ「カフェ・ミロ」で食事。絶品のマヒマヒムニエルに涙するもつかの間、免税店に戻ってくる11人を迎えに行く。ツアコン、免税店発着のツアーを恨む。 8月17日チェックアウト。フロントマンの説明が聞き取れず「Pardon?」と言ったところわかりやすい日本語で解説されてしまった。後方で待機する11人から「通訳いらないんじゃないの?金返せ」の視線。ツアコン、カタマル。 8月18日無事帰国。ツアコンとは、その存在自体がクレームを受け付ける「消費者センター」のようなものであることを知る。それでもタダ旅はいい。次の企画に向け、独身従兄弟説得作戦開始の日々である。
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