87.昔の写真(2002.09.30掲載)
有名人と一般人の違いとしてよく感じる点に、昔の写真のカッコ悪さがある。有名人の昔の写真はカッコ悪い。バラエティ番組で、デビュー当時の青い写真を暴露されたアイドル歌手が赤面するというシーンをよく見かけるが、確かに今の方がいい。年齢に関係なく有名人は今がいい。巨人の清原選手だって、西武時代の若い写真はなんだか垢抜けず、今のおっさん顔の方が恐いけどカッコいい。 では一般人はどうか。一般人は昔の写真の方がカッコいい。社員証の顔写真でサバを読んだり、免許所の更新で新しい顔写真に落ち込んだり、写真立てのやんちゃ姿に「古き良き日々よ」と語りかけたり。こんな経験、ないだろうか。 日々多くの視線にさらされ、見られることを日常としている有名人に分があるのは当然だが、一般人だっていい仕事をし、できるだけ多くの人に接して「見られる」環境に身を置けば、昔の写真がカッコ悪くなる日々が必ず来ると思う。有名人がいいという意味ではなく、今を輝くことがいいという意味で。 食品の世界ではどうか。加工食品も企業努力で改善改良を重ね市場の声を反映させた結果、昔に比べると確実においしくカッコよくなっていると思う。こってり好みの沖縄地区では初期のボンカレー(松山容子パッケージ)じゃないと売れないという地域的例外はあるが、たいていの商品は最新版の方がおいしい。 もちろん、貧困の食卓でありついた「あの味」や、部活帰りにつまんだ「あの味」など、センチメンタルな味付けには勝てっこないが。 しかし、絶対的な判断で昔の方がおいしかったという食品もいくつかあると思う。そういう食品を集め、「昔の味コンテスト」ってなイベントをやってみたいな。 めちゃくちゃに酸っぱかった昔の「ポンジュース」。殺菌条件が甘く、フレッシュ感があった昔の「瓶入り牛乳」。添加物たっぷりのあぶなさがおいしかった昔の「ファンタグレープ」等々。これらの食品には、いろいろなルールに縛られない自由なやんちゃさがある。 昔のやんちゃ写真も捨てたもんじゃない、と思った。
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