90.いも焼酎とマックイーン(2002.10.21掲載)
先日、鹿児島方面に出張した際、いも焼酎「さつま白波」で有名な薩摩酒造の焼酎工場を見学させてもらった。工場見学といっても見学用に昔ながらの製法を再現した「明治蔵」と呼ばれる別棟を見ただけであり、真の目的は、そこで販売されている「いもビール」にチャレンジすることであった。 果たしてその第一印象は、いも焼酎よろしく「くさい」の一言。スーパードライに慣らされてしまった舌は、シラス台地がもたらす醸造の恵みを規格外として受け付けなかったのだ。ま、こんなものだろう、地ビールなんて。 そして帰宅後、異郷でのいも焼酎といもビールの痛飲は、私をある名画鑑賞へといざなった。その映画は「大脱走(1963年:ワーナーブラザーズ)」。スティーブ・マックイーン、リチャード・アッテンボロー、チャールズ・ブロンソン、ジェームス・コバーン等々、豪華キャストが勢揃い。第2次大戦下、ドイツ軍捕虜収容所に集められた連合国軍将兵たちがトンネルを掘って脱走するというストーリーは、「大脱走マーチ」とともにあまりに有名。 最初に見たのは中学3年の修学旅行の夜だから、もう四半世紀も前のことになる。たまたま金曜ロードショーで上映された「大脱走」を、部屋にこもってクラス全員でかぶりついた。担任の先生まで、「今日は大脱走があるな」と言っていたぐらいだから、娯楽のなかった当時、「大脱走」のTV放映は一大イベントだったに違いない。 で、そんな「大脱走」といも焼酎との関係であるが、映画の中でマックイーンがじゃがいも焼酎を作るシーンがあるのだ。これを7月4日のアメリカ独立記念日に捕虜仲間たちに振る舞うのだが、最初に口をつけた瞬間、名優たちが皆クセのある味に顔をしかめる演技をする。私たちが初めていも焼酎を口にした時のように。しかし、すぐに酔いの勢いが勝り、場は盛り上がるのだ。うん、こんど北海道に行ってじゃがいも焼酎にチャレンジしてみよう。 自分と同い年の「大脱走」。いも焼酎を飲むたび、マックイーンと修学旅行の夜を思い出すのである。
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