92.底力(2002.11.04掲載)
東京の底力はすごい。 月1回の上京とわずかな在住経験ではとても太刀打ちできない夜に遭遇した。 それは先月、有楽町の東京国際フォーラムで開催された「アンドレ・リュウ」のコンサートでのできごと。難解なクラシックをポップに楽しくエンターテイメントする「アンドレ・リュウ+ヨハンシュトラウスオーケストラ」の人気は高く、5000席が満席。客層に、アンドレ氏の写真集を手にした中年カップルと20代女性が多いのが特徴的。 底力その1.「美しく青きドナウ」の演奏前、氏が「これはダンスのための音楽です。踊りましょう」と言い場内の照明が全開になると、本当に通路で踊り出すカップルが続出。見ているだけで恥ずかしかった。田舎では絶対にありえない、人前でワルツを踊るなんて。おかげで場内盛り上がる。 底力その2.休憩時間、ロビーの喫茶コーナーに長蛇の列。そして、その先には800円のハンバーガーが。個人金融資産1400兆円のほとんどが東京にあるのではと思わせる恐るべし財力。私も私財をなげうって食べてみたが、喫茶店の普通のハンバーガーという感じで味気なく、マクドナルドに冒された舌には少々物足りない味だった。 底力その3.すぐ前の席に、1人ぽつねんと座る30代前半の男性。185cm、90kg、角刈りの体育会系でどう見てもこの会場には不似合い。しかし終盤、体はワルツとともにスィングし始め、天井から風船が舞い降りるやそれを両手に取り頭上でシェイク。すごい。ごつい体育会系男がこんなにおちゃめになるなんて。これまた田舎じゃ考えられない。ごつい角刈り=演歌という固定観念を除去しなければ、アンドレ・リュウのファン層の広さと東京の広さにはついていけない。 こんな底力を見せつけられ、もちろん音楽も堪能し、ついでにCDを買って会場を出た。 信号待ちで、メルセデスSLK320カブリオレに乗る白人男性がショパンを全開で聴いていた。 東京の底力はすごい。
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