93.納豆から眞露まで(2002.11.11掲載)
このコラムの本年4月1日号で、納豆嫌いを克服中である旨の話を書かせてもらった。あれから半年。皆様からの励ましと、エコノミー症候群対策と、ミツカン「におわなっとう」のおかげで毎日完食納豆大好きの日々となった。嫌いだった納豆臭が何となく好きになり、あげくなくてはならない存在になる様は、ちょっと変な顔のアイドルタレントに少しずつ引き込まれ、気がつけばその変なところが大好きになっているというパターンに似ている。「あばたもえくぼ」の真理である。 納豆臭物質は、今から10年ほど前に朝日食品という納豆メーカーによって解明されていた。しかし、これを商品につなげたのは97年に同社を買収したミツカン。99年ににおわない納豆菌を発見し、2000年に商品化して現在40億円の売上という。 この「におわなっとう」、ミツカン社内報奨制度適用第1号の商品らしく、マーケティングと開発担当者に売上の0.1%である400万円が支払われた。めでたしめでたし。私の納豆嫌い克服が報奨金の一部につながったかと考えると、同じ開発者として何となくほほえましい。 こういう観点で見渡すとほかにもあるぞ。 花王は、「クイックルワイパー」「毛穴すっきりパック」の開発チームにそれぞれ500万円を報奨し、タカラは「ベイブレード」「e−kara」のヒットで合計1億円を全社員に還元した。 このような最近の報奨ブームには成果主義の表れということのほかに、頻発する特許所有権訴訟対策という一面もある。 元来、特許は発明者のものである。それが業務上の発明であっても、発明者は企業に対して相当の対価を請求する権利を持つ。だから青色発光ダイオードの発明者である中村修二氏や人工甘味料「アスパルテーム」の発明者である成瀬昌芳氏は、会社に対して20億円の対価を請求したのだ。 ここまで高じるとほほえましくもないし、滅私奉公精神の染みついた私には理解しがたい世界であるが、ちょっとだけあやかりたい気分になって韓国の焼酎「眞露(JINRO)」を飲んだ。アスパルテームの入った本国産は甘くておいしかった。
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