96.優等生の憂鬱(2002.11.26掲載)
大阪の海遊館に隣接する「なにわ食いしんぼ横丁」で食い倒れてきた。この横丁、株式会社ナムコがプロデュースしたもので、昭和40年代前後の大阪を再現した街並みに関西の繁盛店20店が軒を並べている。新横浜のラーメン博物館が昭和30年代初期の設定だから、それより10年ほど新しい大阪の街。つまりは昭和45年の大阪万博を控えて意気上がるなにわの街。 高度経済成長期のなにわの味は卵の味だった。明治43年創業のカレー屋「自由軒」も、大正11年創業のオムライス屋「北極星」も卵を多用し、卵のおいしさを前面に出していた。 昭和45年頃、1人あたりの消費量が年間100個を超えた卵は食卓の主役となり、とうちゃんの血と汗になった。遠足の弁当にアソートされた厚焼きは黄金色に輝き、おふくろの味を舌に刻んだ。そして、テレビでは「巨人の星」を提供するオロナミンCのCMで、「卵でわってオロナミンセーキ!」。当時はなんだか恐ろしくてチャレンジできなかったオロナミンセーキ、今飲むとけっこういける。 その後の経済発展とともに卵の消費量は伸び続けるが、いつからか「物価の優等生」てなレッテルを勝手に貼られてしまい、年間消費量が300個を超えて世界第2位になった今でも、昭和45年当時と同じ価格で提供されている。栄養面はもちろん、価格面でも食卓を支える優等生となったのだ。他に95%が国産であることを指して、「食糧自給の優等生」と称される場合もある。すごいおりこうさんだ。けど、優等生に祭り上げられた卵自身は、けっこう迷惑しているんじゃないか。「大リーグで優等生はつぶされる」とマスコミに叩かれている人みたいに。 だから、ハメを外す部分があっていいのだ。コレステロールが高いとか、アレルギーになるとか、貧血気味の人は控えた方がいいとか。おまけに、卵の消費量世界一がイスラエルであるという点も、なんとなくあやしくていい。 オロナミンセーキを飲みながら、イスラエルの卵料理を想像してみた。
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