97.ネーミングの奥義(2002.12.09掲載)
前回のコラムで「オロナミンセーキ」について書かせてもらったが、読者の方から「オロナミンCの語源は何か?」とのご投稿をいただいた。オロナミンCは、大塚製薬の看板商品「オロナイン軟膏」とビタミンCをくっつけた造語である。と、同社に勤務する友人が言っていた。ついでに「ポカリスエット」の「ポカリ」について聞いてみたが、これには何の意味もないらしい。ネーミングの奥は深い。 手塩にかけた新商品を世に送り出す時の最後の仕事がネーミングであり、この優劣が新商品の成否を握る。特に食品のネーミングはクルマのようにかっこいい響きだけでは受け入れられず、おいしさを伝えるという難題を抱えている。だから自信のない時はプロのコピーライターに頼み、ひらめいた時のみ名付け親を目指す。 かつて私の右手にコピーの神様が降りてきて、「味噌汁がおいしくなるだし削り」なるネーミングを授けてくれた。大ヒットを確信してCMを打った。が、全く売れず1年で販売中止。なぜだ。商品特徴をそのまま盛り込んだネーミングには、「じっくりことこと煮込んだスープ(ポッカ)」や「うまい味しみおでんの作り方、教えます(味の素)」など、ヒット商品が多いのに。 そこで、某大手広告代理店のコピーライターを講師に招き、ネーミングとキャッチコピーの勉強会を開催した。この先生、「ヤンロン茶(ダイドードリンコ)」「ジャック(ハウス食品)」「シティハイク(JR西日本)」などを手がけた大御所である。 曰く、「ネーミング依頼1件につき1晩で1000個の候補を考える」。すごい。「大きめの付箋を1000枚買って帰宅。ひらめいたら書いて壁に貼る。翌朝、回収して出社」。うーん、体育会系。「キャッチコピーに困った時は否定形を使う。『何も足さない、何も引かない(サントリー)』みたいに」。なるほど、いただき。 けど、結局はCMを大量に投下し、消費者により多く刷り込まれたものがいいネーミングになるという。「なめらかかと」「髪の毛まとめてポイ」「トイレその後に」など、ユニークなネーミングでヒットを重ねる小林製薬も、約140億円(対売上比約8%)という広告宣伝費を使ってこその認知度なのだ。 勝てば官軍のオキテに竹やりで挑む日々は続く。
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