1007.冬眠技術(2021.2.15掲載)
手塚治虫作品の「ブラック・ジャック」で、難病にかかった夫婦がソ連の冬眠カプセルで治療法が見つかる未来まで眠りにつくというシーンがあった。 人工冬眠状態で宇宙を旅する映画も見た。 こんなSF話に近づく冬眠研究が各方面で行われているが、実際はかなり現実的なテーマばかりである。 例えば寝たきり予防。 クマは5〜6カ月間冬眠するが、体を動かさないにもかかわらず筋肉や骨があまり衰えない。 仮に人間が冬眠状態になった場合、筋力は1日あたり0.5%減っていき、クマ同様5カ月間続けば、理論上は90%もの筋肉が失われてしまう。しかし、クマの筋量は20%減る程度。 この秘密が解明されれば、寝たきりや骨粗しょう症予防のヒントにつながる。さらには、同じ種類の動物の場合、冬眠する種の方が冬眠しない種より寿命が長いことがわかっており、長寿研究にもつながるはずだ。 メタボ予防やダイエット法の研究もある。 クマは冬眠前に爆食し、太れるだけ太る。冬眠前の摂取カロリーは通常期の2倍以上で1日2万キロカロリー。体重にして80〜100キロ増で本番に突入する。 ところが、こんな過食をしても人間のように血中脂肪は上昇しないし、脂肪肝や動脈硬化とも無縁。ここに生活習慣病予防のヒントがある。 おまけに、冬眠に入ると食を断つ。つまり、自ら食欲をコントロールしているわけで、現代人のとどまることを知らない食欲を制御できる可能性があるのだ。 長寿に生活習慣病予防にダイエット。いいことばかりの冬眠に個人的にチャレンジするべく、真冬の就寝時にTシャツと短パンで寝床に入った。 寒くて気を失うように眠りについた。 猛吹雪の山で遭難し、雪ん子に遭遇する夢を見た。「ここから先は行ってはなんねぇ」という雪ん子の忠告で目が覚め、プチ冬眠から生還したのである。
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