1009.魚食再興(2021.3.1掲載)
昨秋、コロナの間隙を縫って居酒屋でサンマの塩焼きを思いっきり食べた。 脂が乗ってておいしかったが、会計時にはすっかり高級魚になってしまっていた。 サンマもスルメイカも毎年のように不漁が報道され、水産資源の枯渇が懸念されているが、実は世界的に見ると天然魚の漁獲量は減っていない。 国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2020年の「世界漁業・養殖業白書」によると、世界の漁獲量は右肩上がりで増加している。具体的には、養殖生産が伸びて天然魚は横ばいという現状。 消費面でも、全世界の一人当たりの魚介類消費量は1961年に9.0kgだったものが2018年には20.5kgと2倍以上になった。人口増大や健康志向、エシカル消費の伸びなどがシーフード市場の成長を後押ししたのだ。 健康面でお手本にされたかもしれない日本の魚食は減少しているのに…。 日本の食卓は肉に取って代わられ、国民一人当たりの魚介類消費量は1961年の50.4kgから2018年には45.9kgに減少した。 韓国は13.2kgから55kg、中国なんか4.3kgから38.2kgに激増したというのに。 それに呼応するように、日本の漁業と水産業は年々衰退している。ピークだった1984年の漁業生産量1282万トンが、2018年には442万トン。 この激減には理由がある。それは、漁獲規制をしなかったから。 日本ではほとんどの魚種で漁獲規制を行っていないが、世界では当たり前。持続可能な最大の漁獲量に基づく数量管理が基本なのである。 資源の再生産能力が落ちてしまうような乱獲状態を避け、安定的に漁獲できる水準に親魚の量を維持しているのが世界標準なのだ。 とにかく、しっかり漁獲をコントロールし、食卓に魚食文化を復活させるしかない。クジラを肉だと思って食べ、本当の肉は年に数回のハレの日にしか食卓に上らなかった昭和世代が切に念じる。 さかなクンの力を借りつつ、「ギョロッケ」という魚肉コロッケを広めたりし「すぎょい魚食文化」を再興したいと思うのである。
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