1010.非常食(2021.3.8掲載)
今から十数年前の冬、雪山で遭難した55歳の男性が12日ぶりに生還したというニュースが話題になった。 12月30日に福島、山形両県にまたがる吾妻連峰に登り、強い吹雪で道に迷い遭難するも、1月11日夕方に福島県のスキー場近くで無事発見されたという事件だった。 救出後、その男性が聞き捨てならないことをコメントしていた。 「食料が1月4日に尽きた後は、雪や沢の水を口にし、だし調味料や塩をなめて飢えをしのいだ」 だし調味料って、顆粒状のだしの素のことかな。 おそらくは、テントで料理を作る際の調味料として常備していたのだと思うが、雪山で1週間も命をつないだのだとしたら、これは大事件である。 考えてみれば、だしの素は「かつお節10%、食塩30%、アミノ酸30%、糖類30%」が大まかな配合であり、タンパク質とともに、生命に必要な食塩、アミノ酸、糖が均等に配されたバランス栄養食ではないか。足りないのは脂肪分くらいだ。 画期的な和風非常食誕生ということになりそうだが、賞味期間がやや気になる。だしの素の賞味期間は1年6ヶ月。非常食なら3年は必要だろう。 実際、大塚製薬の非常食用カロリーメイト「カロリーメイト ロングライフ」の賞味期間は3年に設定されている。一般的なカロリーメイトの配合を少し変え、賞味期間を延長したらしい。 ならば、「だしの素 ロングライフ」を開発するか。 件の遭難者が料理好きだからだしの素を持っていたのか、はたまた登山にだしの素は常識なのかは不明だが、和風食材が人命救助に貢献したことは誇れる事実である。 商品パンフレットの裏面に、こっそり記入しようと思うのである。
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