1024.滅私奉公と特許訴訟(2021.6.14掲載)
納豆が食べられるようになってはや10年。 ひとえにミツカンの「におわなっとう」のおかげであり、納豆臭を抑えることに成功した優秀な技術者のおかげである。 納豆臭物質が「分岐鎖脂肪酸」であることは、朝日食品という納豆メーカーによって以前から解明されていたが、これを商品化するノウハウがなかった。 これに目を付けたミツカンが同社を買収。「分岐鎖脂肪酸」を生成しない納豆菌を発見した技術者によって2000年に商品化したのだ。 この「におわなっとう」、ミツカン社内報奨制度適用第1号の商品で、マーケティングと開発担当者に当時の売上40億円の0.1%である400万円が支払われた。めでたしめでたし。私の納豆嫌い克服が報奨金の一部につながったかと考えると、同じ技術者として何となくほほえましい。 こういう観点で見渡すとほかにもあるぞ。 花王は、「クイックルワイパー」「毛穴すっきりパック」の開発チームにそれぞれ500万円を報奨し、タカラは「ベイブレード」「e−kara」のヒットで合計1億円を全社員に還元した。 このような報奨金ブームには成果主義の表れということのほかに、頻発する特許所有権訴訟対策という一面もある。 元来、特許は発明者のものである。 それが業務上の発明であっても、発明者は企業に対して相当の対価を請求する権利を持つ。だから「青色発光ダイオード」の発明者である中村修二氏や人工甘味料「アスパルテーム」の発明者である成瀬昌芳氏は、会社に対して20億円の対価を請求したのだ。 ここまで高じるとほほえましくもないし、滅私奉公精神の染みついた私には理解しがたい世界であるが、ちょっとだけあやかりたい。 けど、職場相手に特許裁判なんて、とてもとても。 日本的経営と欧米型成果主義の一典型のような滅私奉公と特許訴訟。ここは深く考えず、自分が出願した特許が数百億円の利益を生み出して訴訟を考える妄想を楽しむしかない。 宝くじが当たったら、みたいなレベルだけど。
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