1025.コツコツ先生(2021.6.21掲載)
リクルート社が、優秀な学生を見抜くポイントとして「就活6ヶ条」なるものを定義している。 「地頭がいい」「要領がいい」「コツコツ地道な努力ができる」「体力がある」「人に嫌われない・嫌わない」「ストレスに強い」の6ヶ条。 周囲を見渡してみると、50代の出来物(できぶつ)に共通しているのは「コツコツ」ができる点だった。 昔は「コツコツ」研究に精を出していた技術者も、詰め込んだ知識を武器に要領と段取りで最短距離を走るようになる。科学の神様に申し訳ないと思いつつも、成果の皮算用に明け暮れ、費用対効果の求道者に成り下がってしまうのだ。 ところが、73歳になってもコツコツデータを取り続け、2009年の京都賞を受賞された科学者がいる。米プリンストン大名誉教授のピーター・グラント博士と奥様のローズマリー博士である。 グラント夫妻は1973年から37年間、ガラパゴス諸島のダフネ島でガラパゴスフィンチという鳥の全個体1200羽にマーカーを付けて観察し続け、ダーウィン進化論の自然淘汰の実証に貢献したのだ。 1977年、大干ばつで餌が枯渇。わずかに残った硬くて大きな種子を割るため、くちばしが太めの個体だけが生き残った。メスは生き残りの中でもよりくちばしの太いオスと交配した。結果、干ばつを境にくちばしは平均5%太くなった。 1983年、平年の14倍という記録的な大雨でジャングルが発生し、小さな種子が豊作に。結果、小さめのくちばしを持つ個体が大繁殖。小さい種子を食べづらい太いくちばし個体は、約9割も減った。 どうやら、進化は一方向ではないらしい。 それにしても気の遠くなる時間軸。気の遠くなるコツコツ。 努力を尽くした者に幸運が訪れるというが、特異な気象条件に出会えたのは、まさにそういうことなんだろうな。 食品をテーマにした研究も然り。栄養成分も機能性成分も薬じゃないからゆっくり作用する。 短期間で劇的な結果が出ることなどあり得ないのだから、コツコツやるしかない。 グラント先生の偉業を胸に、決意を新たにしたのである。
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