104.おにぎりの芯(2003.2.3掲載)
第4次ラーメンブームの現在は、第2次おにぎりブームでもあるという。コンビニでは箱弁当の売上低迷をよそに、おにぎりが前年クリアでがんばっているし、あるハンバーガーチェーンは、「オムズ」なるおにぎりファーストフードの展開を始めた。噂の新丸ビルにも、おにぎり専門店「おにぎん」が入っている。 こんなブームにあやかろうと、芯具材を供給する加工食品メーカーはその開発に力が入る。売れ筋おにぎりになると1店舗の販売個数が1日約20個。8000店のチェーンだと、16万個のおにぎりが芯具材の売上を手伝ってくれる。たかだか1個5gの芯具材が、1日800kg、1年間で290tに化ける。kgあたり1000円の芯具材なら、知らない間に売上3億円のヒット商品となるのだ。 とはいうものの、ラーメンブームでトレンドが味噌→とんこつ→醤油とんこつ→水産系だしと変遷したような味のうつろいはなく、昔も今も、おかか、鮭、昆布、ツナマヨの四天王が健在。米文化だけに、ブームとはいえけっこうトラッドなんだ、おにぎりって。 そのトラッドぶりを調べてみる。弥生時代の遺跡からも発掘されたおにぎりは、平安時代に「屯食(とんじき)」という名で食されていた。屯とは間に合わせの意。つまりは当時も携帯食。その後、にぎり飯の女房言葉として「むすび」という言葉が生まれる。「むすび」は祭りの時、ご飯を固く手で結んで神様に差し上げたことに由来を持つらしい。こんな超トラッド食おにぎりが、何の因果か平成の御代に、コンビニ時代の主役として躍り出てしまったのだ。 今話題の映画「壬生義士伝」で、まんまるおにぎりが象徴的に使われているシーンが2ヶ所ある。最初は新撰組隊士、斉藤一がむさぼり喰らうおにぎり。生きるという本能の象徴。次は主人公吉村貫一郎が手をつけなかったおにぎり。義を通した武士道の象徴。そこには原作者が込めたメッセージが芯具材としてたっぷり詰まっていた。 日本最古のファーストフード、おにぎり。長寿の秘密は、「何でも芯に詰められる」ということではないだろうか。
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