1053.噛ミング30(2022.1.17掲載)
国立健康・栄養研究所などの研究グループが、全国の女子大生1744人を対象に実施した調査によると、食べる速さが「とても速い」と答えた人は、「とても遅い」と答えた人より平均で5.8キロ体重が重かったらしい。 あらためて、「早メシは肥満の元」が実証されたデータである。 この調査での新発見は、早メシの人ほど食物繊維の摂取量が少なかったということ。食物繊維の少ない食事は食べやすく、早メシが加速。満腹中枢が機能する間もなく必要以上に食べてしまう。 私は食物繊維の多い食品を好んで食べるが、早メシである。 昭和40年代、しゃべりながら食べるとぶん殴られる食卓で育ち、数少ない肉を兄弟で奪い合った当然の帰結として、早メシである。 さらに、中高6年間の体育会系部活動は着替えるスピードとともに早メシを加速させた。 だから、2時間かけてじっくり食べるフレンチがどうも性に合わない。くやしいが貧乏性が抜けきらないのだ。 フランス料理のスタイルが確立したルイ王朝の頃、貴族にとって食事は数少ない娯楽のひと時であり、2時間なんてあっという間だった。 クラシックのコンサートも2時間、オペラも2時間、演劇も2時間。ついでに大相撲の幕内取組も2時間で、江戸時代の一刻(いっとき)も2時間。2時間は優雅な時代の1単位だったのだ。 実際、育ちがいい人ほど遅メシかもしれない。優雅に食べて5.8キロ体重が落ちるのなら一石二鳥。 ところで、育ちが悪い人を対象にしたのかもしれない「噛ミング30」運動はどうだろう。一口30回噛みましょうということだが、減量のためにこんな修行のようなことはできない。 カウンターで揚げたてのキスの天ぷらをペロリ。にぎりたての中トロをペロリ。吉野家の牛丼をペロリ。出された瞬間が最高の味だから、30回も噛ミングできるわけないだろう。 だからやっぱり早メシ万歳なのである。
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