1055.塩(2022.1.31掲載)
以前、東京国立博物館で開催された「日本国宝展」で、志賀島で発見された金印を見たことがある。教科書でよく見る「漢倭奴国王」と刻まれたあのハンコである。 実物は教科書の印象より小さく2センチ角くらい。ただ、その金色の輝きが尋常じゃなく、ものすごいオーラを放っていた。第一発見者である志賀島の農民も腰を抜かしたに違いない。 ハンコ文化の日本ならではの国宝である。 ハンコといえば「シヤチハタ」が有名だが、シヤチハタ株式会社はもともと朱肉とスタンプ台のメーカー。 なのに、スタンプ台の存在を否定する「スタンプ台不要のシヤチハタ印」を発売して大躍進したわけだから、今はやりのイノベーション企業ということになる。 このシヤチハタ印、本当は「Xスタンパー」という商品名だが、シェアが高すぎて「シヤチハタ」という社名が商品名として認識されている。 そして、食品の研究者として注目したいのは製造に塩を使うということ。シヤチハタ印はゴム部分に小さな穴が開いていてインクを浸透させる仕組みだが、ゴムに小さな穴を開けるために塩を使用しているのだ。 ゴム原料に塩の小さな結晶を混ぜ込んで成形し、そのゴムを水洗することで塩の結晶が水に溶け、穴あきのゴム印ができる仕組みだ。 古代ローマでは塩を買うために給料が支払われていたことから、「salt」→「salary」となったらしいのだが、給料の受け取りで押したシヤチハタ印の製造に塩が使われていたというのもサゲで使えそうな話。 減塩ブームで悪者にされ、生物としては1日に2gあれば十分と言われてしまう塩であるが、意外なところで活躍しているのだ。 そして地元愛媛は「塩パン」発祥の地。 「塩ハン」の発祥も忘れないでおこう。
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