1060.パンの耳(2022.3.7掲載)
最近の加工食品は、なんでもかんでも「やわらか」「ふわふわ」「しっとり」「なめらか」である。 噛み応えのある食品が消滅した当然の帰結として若者が小顔になり、あごが小さくなった。 やわらかさの追求は舌触りの追求であり、ナノテクノロジーに相当するミクロン単位の加工技術が要求される(1ミリ=1000ミクロン)。 例えば味の素の「クノールカップスープ」。 なめらかな舌触りの決め手はコーンパウダーの製粉技術。発芽後100日目から107日目の北海道産スイートコーンを収穫したその日に製粉するのだが、コーンパウダー一粒の直径が100ミクロンになるよう調整している。 例えば世界一薄い食品、花かつお。 その厚さ25ミクロン。かつお節をコーンスープの粒より薄く削ることで、お好み焼きの上で踊り、口の中でとろけるやわらかさを実現している。 食品以外でやわらかさの追求が奏功した商品にビーズクッションがあった。 直径500ミクロンのパウダービーズを水着素材の中に詰め込んだ商品「モグ」をヒットさせたエビス化成は、発泡スチロール業時代の年商2億円を、5年で45億円まで発展させた。 ただ、2005年に48億円の負債で自己破産。やわらか、ふわふわのイメージ同様、はかない社歴となった。 こうなると強いのは、ちょっと固い昭和の食感。 岩おこし、ご飯のおこげ、するめいか、煮干し、パンの耳…。 癒し食品のぬるま湯加減に辟易した時、ちょっと固い食品が食欲をそそるスパイスとなるはず。 高級食パンブームもそろそろ終焉を迎えようとしているから、昔ながらの食パンの耳を素揚げにして砂糖をまぶしてみよう。 貧しくも懐かしい昭和の食感に、小顔じゃなくてもいいじゃないかと納得すること間違いなしなのである。
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