1061.ゆば(2022.3.14掲載)
鍋の素の一番人気は「豆乳鍋」だという。 豆乳は1980年頃最初のブームがあったが粗悪品が出回ったせいで人気が急落し、1983年の11万7千tから1992年の2万5千tまで一気に生産量が減少した。 その後、2002年に骨粗鬆症を予防する大豆イソフラボンの健康情報などが消費者に浸透し、2回目のブームで7万9千t。 そして2022年だから、20年ごとに流行る珍しい業界か。3度目の正直でうわべだけのブームにならないようにせねば。 豆乳のうわべは「ゆば」だし。 濃いめの豆乳を加熱し、表面にできる薄い膜を竹串で引き上げると生ゆばができる。タンパク質豊富な健康食品。そんなゆばは中国が発祥ということで、職場の中国人に食卓事情を聞いてみた。 「中国では日常的にゆばを食べるヨ。日本でいうとカマボコみたいな存在ネ」 中華料理にあまり登場しないのは「庶民的すぎるから」だという。なのに日本では京料理の定番。どちらかというと高級路線。 そこで、京都で料理人をやってる従兄に予約してもらい、芸妓さんとゆばを食することにした。 「おこしやす〜」 「芸妓さんと舞妓さんって違うの?」 「舞妓は15〜20歳くらいまでどす。それから芸妓になります。舞妓はだらり帯で芸妓はお太鼓。帯もちがうんどすえ」 「お座敷料金は時間制なの?」 「そうどす。けど、普通のコンパニオンさんとちごて、お茶屋さんを出てからお茶さんに戻るまでの時間で計算します。昔はお線香が何本燃えたかでお勘定したみたいどすけど」 なんだかお勘定のことばかり気になり、落ち着かなかった。 おばんざいもゆばの味も記憶にはなく、うわべだけかじった京の夜だった。
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