1062.タコウインナー(2022.3.21掲載)
タコウインナーには想い出がある。 小学1年の遠足のお昼ご飯、弁当箱のふたを開けたままトイレに行った山本君のお弁当を、野良犬が食べてしまうという昭和でもびっくりの事件が起こってしまったのだ。 「みんな少しずつおかずを分けてあげなさい」 担任の森先生の言葉に、涙ぐむ山本君が笑顔に変わった。 その時、私が提供したおかずが大好きなタコウインナーだったのだ。山本君のお弁当箱の中で、燦然と輝く私の真っ赤なタコウインナー。友情の証としては最高の贈り物だぜぃ。 その日から、タコウインナーの赤を見るたびにこの日のことを思い出す。 もしあの時、山本君にあげたウインナーがシャウエッセン等のホンモノ志向系だったら、こんな風に記憶のランドマークにはならなかったに違いない。 ウキウキの遠足に顔色の悪いタコウインナーじゃ、まずいだろ。 真っ赤なウインナーの原材料表示を見てみる。 「…着色料(カルミン酸、アナトー)…」 注目は、カルミン酸。 これは、メキシコあたりのサボテンに生息するエンジ虫のメスから抽出されるという不思議な色素。 そういやタコウインナーも、「原産国:メキシコ」って感じの面構えだし。 うん、前世はソンブレロとポンチョをまとったメキシコ人「ホセ・ロドリゲス」てなストーリーもいい。 ラテン系の食べ物だったんだ、タコウインナーって。 これ以上「ハレ」の日を演出できる食材は他にないぞ。 保存料や着色料に過剰に反応するのはやめようと思う、春の夕暮れなのであった。
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