108.ひなあられ(2003.3.3掲載)
男性には縁遠い3月3日のひな祭りであるが、なぜか33年前の3月3日だけは今でも鮮明に思い出すことができる。 小学校1年生の3月3日。私は、その日学校を休んだN君の家に、給食で出たひなあられを届けに行った。部屋に上がるとN君のおふくろさんが天井から氷のうをつり下げていて、「これええやろ」と言いながら床に伏すN君の額にそれを載っけた。そして、二人にひなあられの由来を話してくれたのだ。 「昔は洗い流しのご飯も一粒一粒大切に集めて乾飯を作っておき、これをお正月の餅の切れ端と一緒に炒ってお供えをした」 ふーん、残り物を大切にする気持ちをお供えしたんだね。なんてませたリアクションなど当然できず、ポカンと口を開けていたところで記憶は途切れるのである。 センチメンタルに思い出のひなあられをつまみながら、3月3日の食品業界に目を向けてみた。ひなあられ市場は約17億円と小さく、米菓全体の0.7%に過ぎないが、バレンタイン商戦後の寂しさを紛らわしつつ、春需要の到来を告げる華商材としての意味あいを持つ。 給食ひなあられの最大手は日東あられ。約1億円を3月3日の学校給食で稼ぐ。一方、量販店向け一般商品を見ると、ここにもキャラクターの波。ポケモン、アンパンマン、ハローキティなどが売れ筋を占める。ひな祭りという最高のキャラクターが付いた限定商品であるにもかかわらず、5%のロイヤリティーを払って市場での優勢を確保しようとする商魂である。 ところで、少子化、核家族化にもかかわらず、ひな祭りを祝う家庭は年々増加傾向にあり、一般家庭で59%、小学生以下の子供がいる家庭だと70%を越えるらしい。増加の理由はわからないが、ボケモンやアンパンマンがこの傾向に一役買っているのだとしたら、キャラクターもまた良しかなと思う。 ひなあられと一緒にお米を大切にする気持ちをお供えし、ちょっとだけボケモンにロイヤリティーをお供えする3月3日なのである。
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