1090.明日晴れるかな(2022.10.10掲載)
以前、アンチエイジング研究の第一人者である米井嘉一博士の講演を拝聴したことがある。 米井先生が考える老化のメカニズムは極めてシンプルで、「さびる、しぼむ、風化する」。「さびる」は酸化、「しぼむ」はホルモンの低下、そして「風化する」は生きがいを失うことによる神経機能の低下である。 つまり、さび止めして、気をふくらませ、生きがいを持てば若返るというのだ。 そのための6項目が、「運動する」「食事に気をつける」「禁煙」「プラス志向で生きる」「芸術に親しむ」「恋愛する」。 う〜ん、最後の3つが重要だな。これらを守れば、人生の「春夏秋冬」で秋にさしかかっていた遺伝子が春に戻るらしい。ああ、我が青春。 ロマンスグレーが茶髪になり、セピア色の想い出がカラー映像で現実となるのか。街行く老人たちが皆色気づくのも怖いが、芸術と恋愛に精を出せば日本経済にとってもプラスのはず。 ところで、カラー映像といえば、最近NHKが特殊技術で過去の白黒映像をカラー化し、昔の日本を振り返るという企画をよくやっているが、これは衝撃。 白黒映像だと、どこか遠い国の出来事のような大東亜戦争が、カラーで見るとリアルに現代とつながる。白黒だと何も感じない出征兵士の壮行会映像が、カラーだと涙で直視できない。戦争は昔話じゃなかった。 日の丸も、桜の花も、今と同じ色だった。もちろん兵隊さんの血の色も。 少々強引かもしれないが、老人が若返るということは、昭和初期をカラー映像で見るような生々しさを伴うものなのかもしれない。日本固有の「隠居の美学」に逆行するのは、やはり怖い。 古き良き時代は、セピア色にしまってあるからこそ美しいのである。 桑田佳祐さんの名曲のフレーズが胸にしみる。 「在りし日の己を愛するために 想い出は美しくあるのさ」
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