110.仮想水(2003.3.17掲載)
3月16日から始まった「世界水フォーラム」で議論される内容の一つに、「仮想水」がある。これは、穀類や肉類を生産するために、灌漑用水、雨水など、どれだけの水が必要かを試算したもので、例えば「米1kgを作るために必要な水は5.5t=仮想水」という具合である。牛肉の場合なんかだと、飼料となる穀物の仮想水まで計算に入れるから、1kgの牛肉に必要な仮想水は20t。すごい量だ。 では、人間の場合はどうか。洗濯、入浴などの生活水を除き、生物としてのヒトに必要な水は1日2.5Lといわれている。食糧の仮想水を無視しても、80歳まで生きる人は73tの水を消費することになる。 こんな感じで改めて水の重要性が認識され、食品業界における「水商売」は活況を呈している。サントリーは業界1位である「南アルプスの天然水」に加え、「天然水阿蘇」「100%深層水」「ヴィッテル(販売権をサッポロから移管)」を販売。キリンは「アルカリイオンの水」と「ボルヴィック」。サッポロは「エビアン」。ハウスは「六甲のおいしい水」で、大塚が「クリスタルカイザー」。無色透明の商品だけにブランド覇権争いはし烈なのだ。 ミネラルウォーターだけだと1人当たりの年間消費量は8.7Lとわずかだが、清涼飲料水に範囲を広げると、ウーロン茶、コーラ、缶コーヒーなども入ってきて、その年間消費量は1人127L。毎日350ml缶1本がヒト仮想水にカウントされているのである。 ところで、加工食品メーカーが商品を製造する際に使用する水、つまり加工食品仮想水は原価上0円で計算するケースが一般的である。だから、水分の高い商品ほど安く製造できるし、水分の増減がストレートに利益を左右する。同じ規格なら水分30%のパンより、水分31%のパンを作る方が儲かるってことだ。そう考えると、清涼飲料水はその配合のほとんどが水。メーカーが水の原価をいくらで計算しているかは知らないが、「水商売」はきっと儲かるだろうな。 毎年拡大する清涼飲料水市場にあやかりたいものである。
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